AI活用PR

税理士・会計事務所のAI活用|どの業務に使うべきか12業務の早見表

税理士・会計事務所向け

AIをどこに使う?

12業務

業務別の早見表

人が判断する工程も整理
運営元・掲載情報について

本記事は、記事内で紹介している「Zeimee」を提供する株式会社Zeimeeが執筆・運営しています。汎用の生成AIサービスなどに一般的な名称で触れていますが、特定の他社サービスの機能や料金を比較・評価するものではありません。法令・制度の情報は2026年10月10日時点の一次情報に基づいています。

税理士事務所でAIを活用したいものの、記帳、年末調整、確定申告、顧問先対応のどこから手を付けるべきか、AIの出力をどこまで使ってよいのかで迷っていませんか。この記事では、税理士・会計事務所の代表的な12業務について、AIが下書き・候補を出せる範囲と人が判断・承認する範囲を早見表で整理し、線引きの物差しと最初の1業務の選び方を解説します。生成AIの具体的な使い方は会計事務所のChatGPT・生成AIの使い方、セキュリティ対策は会計事務所の生成AIセキュリティ対策で詳しく扱います。

この記事の結論
  • 始めやすいのは、記帳・証憑整理(顧問先を絞って試す)、自計化顧問先の仕訳と証憑の照合、資料回収、所内ナレッジ・教育です。決算・申告書の整合確認と税務の調べものでは、AIは補助にとどまります(12業務の早見表)。
  • AIが向くのは「読む・写す・照らし合わせる・下書きする」工程です。税務上の判断、顧問先への説明、会計ソフトへの反映や申告の承認は人が行います。
  • 線引きは「入力か判断か」「事務所の外に出るか」「後から取り消せるか」の3つの物差しで決めます。
  • 最初の1業務は、件数・転記回数・差し戻しの多さ・誤ったときの取り消しやすさの4観点で採点して選びます。使い始める前に、入力してよい情報と確認者・承認者を決めておきます。

税理士・会計事務所はAIを何に使う?AI活用12業務の早見表

税理士・会計事務所の代表的な12業務について、AIが下書き・候補を出す範囲と、人が判断・承認する範囲を整理しました。「始めやすさ」の基準は表の下で説明します。

税理士事務所のAI活用 12業務の早見表表は左右にスクロールできます。
業務AIが下書き・候補を出す範囲人が判断・承認する範囲始めやすさ詳しい記事
1. 記帳・証憑整理証憑の読み取り、勘定科目・税区分を付けた仕訳候補、会計ソフトの取込形式への変換科目・税区分の確定、例外取引の判断、取込の承認◎(顧問先を絞って試す)記帳代行業務のAI活用/仕訳インポート形式への変換手順/記帳自動化ツールの比較
2. 自計化顧問先の仕訳と証憑の照合仕訳と証憑の日付・金額の突合、不一致や証憑のない仕訳の抽出不一致の原因の確認、顧問先への修正依頼◎自計化顧問先の仕訳と証憑をAIで照合する
3. 担当者入力の月次チェック過去の処理と異なる科目・税区分、異常な金額の抽出指摘の採否、修正の判断○月次の仕訳チェックにAIを使う範囲
4. 決算・申告書の整合確認決算書・内訳書・申告書の数値の突合、前期との比較一覧税務上の判断、申告内容の確定、署名△決算・申告書の整合チェックの範囲
5. 年末調整申告書類の読み取り、提出状況の一覧、控除額の転記候補控除を適用するかの判断、マイナンバーの取扱い○年末調整でAIを使える工程・使えない工程
6. 確定申告資料の分類、不足資料の洗い出し、入力データの下書き所得区分・控除の判断、申告書の確定○確定申告の資料整理と入力にAIを使う
7. 相続税申告の取引履歴の整理複数口座の取引の日付順の一覧化、大きな入出金の抽出名義預金や生前贈与に当たるかの判断、財産評価○相続税申告の預金取引履歴の整理にAIを使う
8. 資料回収依頼文・催促文の下書き、必要資料と受領済み資料の照合顧問先ごとの必要資料の決定、送信前の文面確認◎資料依頼・催促メールの下書き例
9. 顧問先連絡・面談記録面談メモや録音の文字起こしの要約、議事録・連絡文の下書き録音・入力についての顧問先の了解、内容の確認と送信、助言の内容○面談記録の要約のプロンプト例
10. 月次の経営報告・資金繰り表の下書き会計データから取った数値へのコメントの下書き、表の体裁の整理数値の確認、経営助言の内容○月次コメントの下書きでの使い方
11. 税務の調べもの論点の整理、確認すべき条文・通達の候補の洗い出し法令・通達・国税庁資料での裏付け、結論△税務の調べものの手順
12. 所内ナレッジ・教育手順書や顧問先別ルールの下書き、研修資料の整理ルールの確定、規程の承認◎顧問先別の仕訳ルール台帳の作り方/生成AI利用規程の作り方

「始めやすさ」の◎は、件数が多く会計ソフトへの取込前や顧問先への送信前に人が確認できる工程、または顧問先情報を入力せずに試せる工程です。○は、AIの出力を使える範囲はあるものの、年1回の業務であったり、判断や機微な情報を含んだりする工程です。△は、判断や説明が中心で、AIは補助にとどまる工程です。編集部の整理であり、効果を保証するものではありません。事務所の業務量や顧問先の構成によって変わります。

12業務を3つの物差しに当てはめると

◎○△の根拠を、後述する3つの物差しで行ごとに示すと次のとおりです。

12業務を3つの物差しに当てはめた表表は左右にスクロールできます。
業務入力か判断か外部のAIに渡り得る情報誤ったときに止められるか始めやすさ
1. 記帳・証憑整理主に読み取り・転記。科目・税区分の確定は判断取引先名・金額などの取引情報会計ソフトへの取込前に止められる◎
2. 自計化顧問先の照合照合が中心取引情報指摘の段階で止められる◎
3. 月次チェック照合が中心。指摘の採否は判断取引情報修正前に止められる○
4. 決算・申告書の整合確認突合は照合。申告内容は判断決算・申告の情報全体提出前の確認で止める。提出後の訂正は手間が大きい△
5. 年末調整読み取り・転記と控除の判断が混在給与、家族の情報、マイナンバー精算の確定前に止められる○
6. 確定申告分類・下書きと所得区分・控除の判断が混在所得、家族、医療費などの個人情報提出前に止められる○
7. 相続税の取引履歴一覧化は転記。名義預金などは判断被相続人・相続人の預金取引一覧の段階で止められる○
8. 資料回収照合と文面の下書き顧問先名・資料名(絞りやすい)送信前に止められる。送信後は取り消せない◎
9. 顧問先連絡・面談記録要約・下書き面談内容(経営や家族の事情を含み得る)送信前に止められる○
10. 経営報告コメントの下書き。助言は判断会計の数値顧問先に出す前に止められる○
11. 税務の調べもの論点の整理。結論は判断事案の事実関係(一般化すれば不要)回答する前に止められるが、誤りに気付きにくい△
12. 所内ナレッジ・教育下書き顧問先情報を入れずに試せる承認前に止められる◎

記帳・チェック系(1〜4):件数が多く、取込前に確認できる

記帳と月次のチェックは件数が多く、会計ソフトに取り込む前に確認できるため、AIを使い始めやすい領域です。ただし、仕訳候補の質は顧問先ごとの科目ルールに左右されるため、帳票の形式が似た顧問先に絞って試すのが現実的です。自計化している顧問先では、仕訳と証憑をAIで照らし合わせ、不一致だけを担当者が見る使い方も考えられます。

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置は、2026年10月1日から控除できる割合が70%になりました。AIや会計ソフトが出す税区分の候補は、取引日に照らして人が確認します(インボイス7割控除(経過措置70%)の仕訳と記帳対応)。電子で受け取った請求書などの取引データは、AIで仕訳を作った後も、電子帳簿保存法の保存要件に沿って保存します。

決算・申告書の整合確認では、書類間の数値の突合や前期との比較一覧はAIやプログラムで作れますが、申告内容の確定と署名は税理士が行います。

年次業務(5〜7):制度改正と機微な情報に注意

年末調整:令和8年分は所得税の基礎控除の引上げなどの改正があるため、AIで書類の読み取りや転記候補を作る場合でも、控除を適用するかは人が判断します。従業員のマイナンバー(個人番号)を含む情報は、番号法で提供や収集が制限される「特定個人情報」です。AIに渡さない設計にしておくと安全です(年末調整でAIを使える工程・使えない工程)。

確定申告:提出期間は原則として翌年2月16日から3月15日までで(所得税法120条)、短い期間に資料が集中します。資料の分類や不足資料の洗い出しにAIを使い、所得区分や控除の判断は人が行います(確定申告の資料整理と入力にAIを使う)。

相続税申告:申告書は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に提出します(相続税法27条1項)。複数口座の取引履歴を日付順に一覧化し、大きな入出金を抽出する作業は、AIの読み取りとプログラムの並べ替えで進めやすい工程です。名義預金に当たるか、生前贈与があったかの判断は人が行います(相続税申告の預金取引履歴の整理にAIを使う)。

顧問先対応・経営資料・調べもの・ナレッジ(8〜12)

資料依頼文や催促文、面談メモの要約は、AIの下書きに向いています。面談の録音を文字起こしして要約する場合は、録音と外部サービスへの入力について、顧問先の了解と所内の入力区分を確認します。顧問先に送る文面は送信後に取り消せないため、内容と宛先を人が確認します。

月次の経営報告では、数値はAIに計算させず会計データから取ります。AIを使うのは、確定した数値に付けるコメントの下書きや、表の体裁の整理にとどめます。

税務の調べものでは、生成AIの回答を「調べる論点の候補」として扱います。参照先を法令・通達・所内資料に限定して回答させる仕組み(RAG:検索拡張生成)もありますが、結論の裏付けは人が一次情報で取ります。

所内ナレッジは、顧問先情報を入れずに試せるため、最初の業務の候補になります。顧問先別の仕訳ルールを台帳にまとめると、担当者とAIが同じルールを参照できます(顧問先別の仕訳ルール台帳の作り方)。

早見表の読み方:AI活用は業務を「工程」に分けて考える

「記帳にAIを使う」と業務の単位で考えると、1つの業務の中にAIに向く作業と向かない作業が混ざってしまいます。業務を工程に分けると、AIを使う場所と人が確認する場所がはっきりします。

1つの業務を6つの工程に分ける

例えば記帳であれば、次の6つの工程に分けられます。年末調整や確定申告、相続税申告でも、ほぼ同じ流れで整理できます。

業務を工程に分けた例(記帳の場合)表は左右にスクロールできます。
工程記帳での作業の例AIの使いどころ
受付顧問先から証憑・明細を受け取り、顧問先と対象月を確認する資料の分類や不足の洗い出しを補助できる。受領の確定は人
読み取り領収書・通帳・請求書の日付・金額・取引先を読む向いている(AI-OCRや画像の読み取り)
候補作成勘定科目・税区分を付けた仕訳候補を作る向いている。ただし顧問先ごとの処理ルールが必要
確認候補と証憑を照らし合わせ、修正・却下・承認する不一致の抽出はAIやプログラムで補助できる。判断は人
反映会計ソフトへ取り込む、申告書に転記する取込データの作成は機械化しやすい。反映の承認は人
説明顧問先へ結果や指摘事項を伝える文面の下書きは向いている。内容の確定と送信は人

AIが力を発揮しやすいのは、読む・写す・照らし合わせる・下書きするといった、正解の形が決まっていて、後から人が確かめられる工程です。一方、税務上の判断、顧問先への説明、会計ソフトや申告への反映の承認は、結果に責任を持つ人が行う工程です。

AIの種類を区別する:生成AI・AI-OCR・プログラム

「AI」と一口にいっても、税理士事務所で使われるものは性質が異なります。

  • 生成AI:ChatGPTのように、指示文(プロンプト)に応じて文章を作る対話型のAIです。文章の下書き、要約、データの変換ルールの作成、調べものの論点整理に向きます。もっともらしい誤り(ハルシネーション)や古い情報が含まれることがあるため、人が確認する前提で使います。
  • AI-OCR・画像の読み取り:紙やPDFの証憑から文字や数字を読み取る技術です。手書きの有無や帳票の状態によって結果が変わります。
  • ルール処理・プログラム:合計の検算、件数・金額の突合、CSVの列の並べ替えなど、答えが1つに決まる処理です。AIではありませんが、AIの出力をチェックする役割を持たせられます。

実務では、これらを組み合わせます。例えば、手書きの帳票の読み取りはAIで行い、合計金額の検算はプログラムで行う分け方です。AIの読み取り結果をプログラムでチェックすれば、人が確認すべき箇所を絞り込めます。

税理士はAIをどこまで使える?AIと人の線引きを決める3つの物差し

早見表の「人が判断・承認する範囲」は、次の3つの物差しで決めています。早見表にない業務でAIを使うか迷ったときも、同じ物差しで確認できます。

AIと人の線引きを決める3つの物差し表は左右にスクロールできます。
物差し確認する質問関係する条文・指針運用の例
入力か判断かその工程の出力は、正解の決まった転記・照合か、専門家の判断か税理士法33条・45条AIは候補・下書き・不一致の指摘まで。確定は税理士・担当者
事務所の外に出るか顧問先情報が外部のAIサービスに渡るか。成果物が顧問先や税務署に出るか税理士法38条・54条、個人情報保護法、番号法、個人情報保護委員会の注意喚起入力する情報を絞る。送信・提出の前に人が確認する
後から取り消せるか誤ったときに元に戻せるか。戻すのにどれだけ手間がかかるか(運用上の観点)承認と反映を別の段階にし、反映の失敗を成功として扱わない

物差し1:入力か判断か(署名・相当の注意)

税理士法33条は、税務代理で申告書等を提出するときや税務書類を作成したときに、税理士が署名しなければならないと定めています。45条2項は、税理士が相当の注意を怠り、真正の事実に反して税務代理や税務書類の作成をしたときに、財務大臣が戒告または2年以内の税理士業務の停止の処分をできると定めています。

これらはAIの利用そのものを対象にした規定ではありません。ただし、AIの出力を確認せずにそのまま使い、事実と異なる税務書類を作成した場合も、税理士としての注意が問われ得ると考えられます。このため、AIに担わせるのは「候補・下書き・不一致の指摘」までとし、確定は人が行うという線を引きます。

物差し2:事務所の外に出るか(守秘義務・個人情報)

「外に出る」場面は2つあります。顧問先の情報を外部のAIサービスに入力する場面と、AIで作った成果物を顧問先や税務署に出す場面です。

前者では守秘義務が関係します。税理士法38条は、税理士が正当な理由なく、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、または窃用することを禁じています(税理士でなくなった後も同様)。54条は、使用人その他の従業者にも同様の義務を課しています。個人データは個人情報保護法、マイナンバーは番号法の規律も受けます。

個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、個人情報を含むプロンプトを入力する場合は利用目的の範囲内かを確認し、提供事業者が個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。入力してよいかの具体的な判断は税理士の守秘義務と生成AIで整理しています。

後者では、顧問先へのメールや申告書が事務所の名前で出ていきます。送る前に人が確認する工程を省かないようにします。

物差し3:後から取り消せるか(承認と反映を分ける)

会計ソフトへの反映、顧問先へのメール送信、申告書の提出は、実行した後に取り消せない、または取り消しに手間がかかる工程です。こうした工程の手前に人の承認を置き、AIが作った候補が承認なしに反映されないようにします。

ツールや仕組みを選ぶときは、「承認した」と「反映された」を別の状態として記録できるか、反映に失敗したときに担当者が気付けるかを確認しておくとよいでしょう。連携方式ごとの権限と承認の設計は会計ソフトとAIの連携方法を比較で解説しています。

職員がAIを使うときの監督(41条の2)

税理士法41条の2は、税理士が使用人その他の従業者を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう監督しなければならないと定めています。職員が個人の判断で、事務所の管理外のAIサービスに顧問先情報を入力するといった事態を防ぐには、所内ルールと教育が必要です。

日本税理士会連合会は、この監督義務を適切に履行するための「税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に関する指針」を策定しています(令和5年3月改訂。本文は会員向け)。既存の服務規則にAI利用のルールを加える形で整備する方法が考えられます(税理士事務所の生成AI利用規程の作り方)。

最初の1業務の選び方:4つの観点で採点する

早見表で◎が付いた業務でも、事務所によって効果は異なります。最初の1業務は、次の4つの観点で候補を採点して選ぶと、思い付きや声の大きさで決めずに済みます。

最初の1業務を選ぶ採点表表は左右にスクロールできます。
観点1点2点3点確認方法
件数(発生量)年に数回、または一部の顧問先だけで発生毎月発生するが、対象は一部の顧問先毎月、多くの顧問先で発生顧問先一覧と業務の担当表から数える
転記回数同じ数字を写すのは1回以下2回3回以上(紙→Excel→会計ソフトなど)実際の1件を追い、同じ数字を何回写しているか数える
差し戻しの多さ直すことはほとんどない。または原因が税務判断の違い転記ミス・見落としをときどき直している転記ミス・見落としを確認のたびに直している確認担当者に聞く、修正の履歴で原因を見る
誤ったときの取り消しやすさ外に出る、または取り消せない(申告書の内容など)取り消せるが手間がかかる取込前・送信前に確認でき、元に戻せる3つの物差しで確認する

差し戻しの原因が転記ミスや見落としのように照合で見つかる種類なら、AIとプログラムで減らせる余地があるため高く付けます。原因が税務判断の違いなら、AIの候補でも同じ迷いが残るため1点とします。

合計点が高い業務から検討します。ただし、次のどちらかに当たる業務は、合計点が高くても最初の1業務には選ばないというルールを置いておくと安全です。

  • 「誤ったときの取り消しやすさ」が1点の業務
  • マイナンバー、給与、相続関係など機微な情報を外部のAIに渡すことが前提で、渡す情報を絞れない業務

あわせて、顧問先ごとの処理ルール(科目や税区分の付け方)を文章や表に書き出せるかも確認します。書き出せない業務は、AIの候補が担当者の判断とずれやすくなります。判定基準ごとの採点例はAI導入の進め方7ステップのステップ3でも紹介しています。

例えば:採点の一般的な例

一般的な業務を例に採点すると、次のようになります。顧問先の構成や帳票によって点数は変わります。

採点の一般的な例(例えば)表は左右にスクロールできます。
業務(例えば)件数転記回数差し戻し取り消しやすさ判断
月次の証憑の読み取りから取込データ作成まで332〜33候補にする(顧問先を絞って試す)
年末調整の控除を適用するかの判断121(判断の違い)1選ばない(除外条件に当たる)
所内の手順書・資料依頼文の型の下書き1113点数は低いが、顧問先情報を入れずに試す入口として別枠で検討

1. 候補を3〜5業務書き出す

職員に「時間がかかる」「同じ作業を繰り返している」と感じる業務を挙げてもらいます。早見表の12業務を下敷きにしても構いません。

2. 1件の流れを工程に分ける

受付・読み取り・候補作成・確認・反映・説明のどこで時間がかかっているかを、実際の1件で追います。業務全体ではなく、時間のかかる工程を対象にします。

3. 4つの観点で採点し、除外条件を当てはめる

入力する担当者と確認する担当者の両方の目線で採点すると、評価のずれが減ります。

4. 判断者と確認者を決める

AIの候補を誰が確認し、誰が承認するかを決めます。「どこまで見れば承認してよいか」という確認の基準も、言葉にしておきます。

5. 顧問先を数件に絞り、期間を区切って試す

帳票の種類が似た顧問先を数件選び、例えば1〜2か月など期間を区切って試します。最初から全顧問先に広げると、うまくいかなかった原因を切り分けにくくなります。

6. 確認・修正の時間も記録して判断する

AIの処理時間だけでなく、担当者が候補を確認・修正した時間と差し戻しの件数も記録し、導入前と比べます。測り方はAI費用対効果の測り方で解説しています。

AI活用の始め方:汎用AI・ツールのAI機能・業務に合わせた仕組み

最初の1業務が決まったら、どの手段でAIを使うかを選びます。手段は大きく3つに分かれます。

AI活用の3つの手段表は左右にスクロールできます。
手段向く業務準備すること注意点
汎用の生成AI(対話型のAIサービス)文章の下書き、要約、手順書づくり、データの変換ルールの作成利用規約・学習利用の設定・データ保存期間の確認、入力ルールの作成数値の計算や最新の法令の確認は人が行う。入力する情報を絞る(ChatGPTで仕訳はどこまで作れる?)
会計ソフトや記帳ツールのAI機能証憑の読み取り、明細からの仕訳候補の作成顧問先の会計ソフト構成、帳票の種類、料金体系の確認標準機能の範囲外の帳票や、事務所独自の加工は残りやすい(記帳自動化ツールの比較)
業務に合わせて設計する仕組み(内製・外部開発)独自の帳票、複数システム間のデータ加工、事務所独自のチェック業務の洗い出し、判断基準の言語化、会計ソフトとの連携方法の決定要件の整理と導入期間が必要。連携方式と権限・承認の設計を決める

3つの手段は、どれか1つを選ぶものではありません。例えば、文章の下書きには汎用の生成AIを使い、証憑のデータ化には記帳ツールを使い、それでも残る事務所独自の工程だけを仕組み化する、という組み合わせも考えられます。内製・外注・パッケージの選び方は会計事務所のAI導入は内製・外注・パッケージのどれ?で比較しています。

業務に合わせて仕組みを作った事例

顧問先が2,000件を超える税理士事務所では、手書きの日計表をAIで読み取った後も残っていた一行ずつの確定作業を省き、JDL向けCSV作成のためのExcel5工程を1画面にまとめました(削減率などの数値は公表していません。詳しくは導入事例:日計表の転記を削減し、Excelの5工程を1画面に)。本記事を運営するZeimeeは、このようにエンジニアが事務所の業務を確認し、業務に合わせた仕組みを設計・実装するFDE(Forward Deployed Engineer)型のAI導入・開発支援です。AIが作成した候補は担当者が確認・修正・却下・承認し、Zeimee内の承認と会計ソフトへの反映完了を分けて管理する設計にしています(セキュリティ方針)。

一方で、汎用ツールの標準機能で足りる場合や、対象となる件数が少なく仕組み化の効果が見込みにくい場合は、既存のツールや汎用の生成AIから始めるほうが合っています。

AI導入前に最低限決める所内ルール4項目

どの手段を選ぶ場合も、使い始める前に最低限次の4項目を決めておくと、職員ごとの使い方のばらつきや情報の持ち出しを防ぎやすくなります。

AI導入前に最低限決める所内ルール表は左右にスクロールできます。
項目決めること詳しい記事
1. 入力してよい情報の区分顧問先名・個人名・マイナンバー・取引内容などを「入力可」「加工すれば可」「入力不可」に分ける税理士の守秘義務と生成AI
2. 使うサービスと設定利用を認めるサービス、事務所が管理するアカウント、学習利用の設定、データの保存期間AIツール選定セキュリティチェックシート
3. 確認者・承認者業務ごとに、AIの出力を確認する人と承認する人、承認してよい基準AI導入の進め方(確認・承認の線引き)
4. 教育と見直し入所時と年1回の研修、ルールの定期的な見直し生成AI利用規程の作り方

誤入力・漏えい時の初動や認証情報の扱いまで含めた確認項目は会計事務所の生成AIセキュリティ対策、顧問先への説明と契約の見直しはAI利用に顧問先の同意は必要?で扱っています。

参考にできる指針・ガイドライン

日本税理士会連合会は、デジタル・システム委員会が2026年9月に「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン」(Ver1.0)を策定したことを、会員向けに告知しています。本文は会員向けで、本記事では内容を確認できていません。国や業界団体の指針の一覧は税理士のAIガイドライン一覧で整理しています。

総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日公表)は、事業活動でAIを利用する事業者を「AI利用者」と位置付け、人間の判断を介在させること、出力の精度とリスクを理解して使うこと、個人情報や機密情報を不適切に入力しないことなどを挙げています。AIの出力を過度に信頼してしまう「自動化バイアス」への注意も記載されています。法的な拘束力のない指針ですが、所内ルールを作るときのチェック項目として使えます。

なお、個人情報保護法の令和8年改正(令和8年法律第56号)は、主要な改正規定が2026年10月10日時点で未施行のため、本記事は現行法に基づいて書いています。改正点は個人情報保護法の令和8年改正と会計事務所のAI利用で扱います。

よくある質問

公認会計士事務所でも同じ考え方で使えますか?

監査業務でAIを使う場合は、監査の品質管理の観点から別に検討が必要と考えられます。日本公認会計士協会は、テクノロジー委員会研究文書第11号「監査におけるAIの利用に関する研究文書」(2024年8月13日)を公表しています。税務業務でAIを使う場合は、本記事の整理がそのまま当てはまります。公認会計士にも守秘義務があります(公認会計士法27条)。また、公認会計士は一定の税法に関する研修の修了などを条件に税理士となる資格を有し(税理士法3条1項4号・3項)、税理士として登録して税理士業務を行う場合は税理士法上の義務もかかります。なお、同協会の「公認会計士業務とAI」ページでは、生成AIの利用に関する会員向けの指針は確認できませんでした(2026年10月10日時点)。

小規模事務所はどの業務から始めればよいですか?

セキュリティの体制づくりに手が回らない場合は、顧問先情報を入力しない業務から始める方法があります。例えば、資料依頼文の型、所内の手順書、研修資料の下書きです。AIの得意・不得意をつかんでから件数の多い記帳や資料回収に広げると、所内ルールも具体的に決めやすくなります。候補が複数あるときは、本記事の4観点の採点表で比べてください。

無料の生成AIで始めてもよいですか?

顧問先情報を入力しない用途であれば、無料のサービスから試すことも考えられます。顧問先の情報を入力する場合は、利用規約、入力内容の学習利用の有無と設定、データの保存期間を確認してください。判断の整理は税理士の守秘義務と生成AIで詳しく解説しています。

AIに申告書を作らせてもよいですか?

集計・転記・書類間の整合チェックの補助としてAIを使うことは考えられます。ただし、申告書等には税理士の署名が必要です(税理士法33条)。申告内容の判断と確定は税理士が行い、AIの出力は根拠資料と照らし合わせて確認してから使います。

AIを使うと税理士法違反になりますか?

2026年10月10日時点の現行の税理士法には、AIの利用を直接定めた条文は見当たりません。むしろ2条の3は、電磁的方法の積極的な利用などを通じて業務の改善進歩を図るよう努めることを定めています。よく話題になる52条は、税理士または税理士法人でない者が税理士業務を行うことを禁じる規定で、事務所内で税理士や職員がAIを使うこと自体を禁じるものではありません。ただし、守秘義務(38条)、使用人等の監督(41条の2)、相当の注意(45条2項)を踏まえた運用が必要です。個別の判断は、所属税理士会などに確認してください。

顧問先にAIを使うことを伝える必要はありますか?

一律には言えません。AIサービスへの入力が個人情報の利用目的の範囲内か、委託や第三者提供に当たるか、顧問契約の秘密保持条項とどう関係するかによって対応が変わります。顧問契約書や個人情報保護方針の見直し方はAI利用に顧問先の同意は必要?で整理しています。

AI導入の効果はどう測ればよいですか?

AIの処理時間だけで判断せず、担当者が候補を確認・修正した時間、差し戻しの件数、ルール整備にかかった時間も含めて、導入前と比べます。確認・修正の時間を除くと、効果を大きく見積もってしまうためです。計算方法は会計事務所のAI費用対効果の測り方で解説しています。

AI導入に補助金は使えますか?

中小企業基盤整備機構は、2026年2月27日に「中小企業デジタル化・AI導入補助金2026」の公募要領の公開を案内しています。業務効率化やDXのためのITツール導入を支援する事業ですが、公募要領は変更される可能性があるとされています。対象となる事業者やITツールの条件は、申請前に最新の公募要領で確認してください。

まとめ

税理士事務所のAI活用は、業務を工程に分け、AIは候補・下書きまで、確定は人という分担で考えます。始めやすいのは記帳・証憑整理、自計化顧問先の照合、資料回収、所内ナレッジです。決算・申告の判断や税務の調べものの結論は人が持ちます。線引きに迷ったら、「入力か判断か」「事務所の外に出るか」「後から取り消せるか」の3つの物差しに戻ってください。

次の順で進めると、最初の1業務を決めやすくなります。

  1. 早見表を見ながら、自事務所の候補業務を3〜5つ書き出す
  2. 4つの観点で採点し、除外条件に当たる業務を外す
  3. 確認者・承認者と入力してよい情報を決める
  4. 顧問先を数件に絞り、期間を区切って試す
  5. 確認・修正の時間まで記録し、続けるかを判断する

進め方の全体像は会計事務所のAI導入の進め方で解説しています。

参考資料

情報の確認日:2026年10月10日。別日の資料は個別に記載しています。

主な出典

出典の詳細を見る

法令は現行版を確認しています。なお、e-Gov法令検索には税理士法について2028年6月13日施行予定の改正(令和5年法律第53号)も登録されていますが、本記事は現行の条文に基づいています。

この記事の編集方針・執筆者

Zeimee編集部は、会計事務所のAI導入・開発を支援する株式会社Zeimeeの編集部です。

本記事は、税理士・会計事務所の業務を工程に分け、AIが候補・下書きを出せる範囲と人が判断する範囲を整理するために、e-Gov法令検索の条文、国税庁・個人情報保護委員会・総務省・経済産業省・中小企業基盤整備機構の公表資料、日本税理士会連合会・日本公認会計士協会の公開ページなど、一次情報を中心に調査しました。情報の確認日は2026年10月10日です。

早見表の「始めやすさ」は、件数、取込前・送信前に確認できるか、顧問先情報を入れずに試せるかという本記事の物差しに基づく編集部の整理で、効果を保証するものではありません。削減時間や削減率は、出典を確認できる数値がないため掲載していません。他社ツールや汎用の生成AIサービスの実機検証は行っていません。日本税理士会連合会の会員向け資料など、本文を確認できない資料は名称と公表時期のみ記載しています。

法令の解釈は個別の事情によって変わります。具体的な判断は、所属税理士会、所管官庁、専門家にご確認ください。

執筆:Zeimee編集部コラム一覧へ