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会計事務所のChatGPT・生成AIの使い方|業務別プロンプト例と確認手順
会計事務所ですぐ使える
生成AIの使い方

業務別プロンプト例
入力から出力確認まで運営元・掲載情報について
本記事は、会計士・税理士事務所向けのAI導入・開発支援「Zeimee」を提供する株式会社Zeimeeが執筆・運営しています。記事内で触れているOpenAI・Googleの資料は2026年10月10日時点で各社の公式ページを確認したもので、外部への誘導リンクは設けず資料名と確認日を記載しています。ChatGPT、Microsoft Copilot、Geminiなどのサービス名は例として挙げたもので、特定のサービスをすすめるものではありません。仕様や規約は変更される場合があるため、利用前に最新の内容をご確認ください。
会計事務所でChatGPTなどの生成AIを使うとき、迷いやすいのは「どう指示すればよいか」「顧問先の情報をどこまで入れてよいか」「出てきた文章をそのまま使ってよいか」の3点です。この記事では、すぐ使えるプロンプト(AIへの指示文)の型と業務別の例、入力前に伏せる情報と置き換えの手順、顧問先に送る前の確認手順を、法令と官公庁の資料にもとづいて整理します。
- AIに任せるのは下書き・要約・形式変換・論点の洗い出しまで。数値、税務判断、顧問先への最終回答は事務所で確定する
- 指示は「役割・前提・入力・出力形式・禁止事項・確認者」の6欄で書き、合わなければ修正指示で詰める
- 入力前に顧問先名・個人名・番号類を置き換え、残りを検索してから貼り付ける。マイナンバーは入れない
- 月次コメントは確定した数値だけを渡し、AIには計算させず文章化だけを頼む
- 税務の調べものはAIに論点と検索語だけを出させ、e-Gov法令検索→通達→事例→公表裁決の順に原典で確かめる
- 送る前に【要確認】を解消して実名に戻し、数値・根拠・表現・宛先の4点を確認する
会計事務所で生成AIを使う前に決めること:AIに任せる作業と人が確定する作業
生成AI(ChatGPT、Microsoft Copilot、Geminiなど)は、指示と情報をもとにもっともらしい文章を作ります。最初に「AIに任せる作業」と「人が確定する作業」の線を引いておくと、指示の書き方も確認の仕方もぶれにくくなります。
生成AIに任せやすいのは4種類の作業
- 下書き:顧問先へのメール、お知らせ、所内連絡の文案
- 要約:面談記録、長い通知文、会議メモ
- 形式変換:口頭の説明を手順書に、文章をチェックリストや表に
- 論点と検索語の洗い出し:調べものの出発点になる論点の候補やキーワード
いずれも事務所が持つ事実を渡し、AIには形を整える役割を任せる作業です。業務ごとの向き不向きは税理士・会計事務所のAI活用|12業務の早見表で整理しています。
人が確定するのは数値・税務判断・最終回答・提出書類
税務代理、税務書類の作成、税務相談は税理士業務です(税理士法2条1項)。提出書類、顧問先への税務上の回答、その前提となる数値は税理士と事務所が確定させ、AIの出力は材料や下書きにとどめます。
使うサービスとプランも、職員任せにせず事務所で決めておきます。学習への利用やデータの保持など、契約前に確認する項目は会計事務所の生成AIセキュリティ対策にまとめています。
税理士・会計事務所向けプロンプトの型:役割・前提・入力・出力形式・禁止事項・確認者の6欄
プロンプトを思いつきで書くと、出力も確認の観点もばらつきます。事務所で型を決めておけば、誰が書いても必要な情報がそろいます。
下敷きは、Googleの「ビジネスで効果を発揮する AI プロンプトの書き方」の4要素(ペルソナ・タスク・背景情報・形式)と、OpenAIのヘルプ「Best practices for prompt engineering」の勧め(指示を先頭に置く、入力を「###」や"""で区切る、形式を例で示す、しないことより代わりにすることを書く)です。これに「入力の仮名化」「禁止事項」「確認者」を加えました。
| 欄 | 書く内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 役割 | AIの立場 | 会計事務所の担当者として |
| 前提 | 読み手・目的・トーン | 読み手は小規模法人の代表者。不足資料の依頼。丁寧に |
| 入力 | 仮名化済みの事実と確定した数値・日付 | 区切り記号で囲んだ資料名と期限 |
| 出力形式 | 文字数・見出し・案の数 | 本文300字以内で3案 |
| 禁止事項と代替 | しないことと、代わりにすること | 推測しない。不足は【要確認:○○】と書く |
| 確認者(AIには渡さない) | 誰が何を見てから使うか | 担当者が宛先・期限を確認して送る |
そのまま使える穴埋めテンプレート
枠の中をコピーし、〔 〕を埋めて使います。"""の行はそのまま残し、その間に資料を貼り付けます。
【役割】あなたは会計事務所の〔担当者〕です。
【前提】読み手は〔A社の代表者X〕です。目的は〔 〕です。トーンは〔丁寧/簡潔〕にしてください。
【入力】以下の"""で囲んだ情報だけを使ってください。
"""
〔仮名化済みの事実、事務所で確定した数値・日付〕
"""
【出力形式】〔文字数〕以内。〔見出し/箇条書き/表〕で〔案の数〕案。
【禁止事項】入力にない数値・日付・条文番号・固有名詞を書かないでください。必要な場合は【要確認:○○】と書き、不足している情報は最後に質問として一覧にしてください。
確認者(AIには入力しない):〔確認する人〕が〔確認する点〕を見てから使う
禁止事項は「代わりにすること」とセットで書く
「正確に」とだけ書いても、AIは何をすればよいか分かりません。しないことと代わりにすることを組にします。
- 入力にない数値・日付・条文番号を書かない。必要なら【要確認:○○】と記す
- 約束や保証と受け取られる表現を使わない。見通しは事務所で確認する事項として残す
- 原因を推測で書かない。入力にない原因は【要確認:原因】と書く
出力が合わないときの直し方
一度で完成させようとせず、出力を見ながら修正の指示で詰めていきます。
- 修正点を具体的に書く:「もっと良く」ではなく、例えば「案2をもとに、期限を冒頭に移し、敬語を一段やわらかくしてください」のように、どの案の何をどう変えるかを書く
- 良い文例を見本として渡す:事務所で過去に送った文面のうち評判のよかったものを仮名化し、「この文例の構成と長さに合わせてください」と添える
- 顧問先が変わったら新しい会話にする:同じ会話に別の顧問先の情報が残っていると、出力に混ざるおそれがある
- 会話の記憶に関わる設定を事務所で決める:サービスによっては、過去の会話の内容を覚えて次の会話に使う機能がある。使うサービスにこうした機能があるか、使うかどうかを事務所で決めておく
入力前に伏せる情報と置き換えの手順:顧問先名・個人名・番号を伏せ、マイナンバーは入れない
入力前に、顧問先や個人を特定できる情報を置き換えます。置き換え(仮名化)は、AIに渡る情報を絞り、漏えいや目的外利用が起きたときの影響を小さくする実務上の手段です。
| 元の情報 | 置き換え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 顧問先名 | A社、B社 | 同じ会話では同じ記号を使う |
| 顧問先コード | 削除 | 事務所内のコードも、対応表があれば顧問先を特定できる |
| 代表者・従業員の氏名 | 代表者X、従業員Y | 役職や経歴で人物が分かる書き方も一般化する |
| 住所 | 市区町村以下を削除 | 必要なら地方の単位にとどめる |
| 法人番号・インボイスの登録番号 | 削除 | 国税庁の公表サイトで検索でき、名称や所在地が分かる |
| 口座番号・カード番号・電話・メール | 削除 | 文章化には不要。宛先は送信時に人が入れる |
| 取引先名 | 取引先P | 必要なら業種だけ残す |
| 金額・日付 | 必要な確定値・月単位 | 不要な端数や日付は落とす |
| ファイル名・シート名 | 「資料1」などに変える | 顧問先名や個人名が入っていることが多い |
| マイナンバー | 入力しない | 写った資料はマスキングする |
番号は見落としやすい項目です。法人番号は国税庁法人番号公表サイトで商号・所在地とともに公表され、インボイスの登録番号も適格請求書発行事業者公表サイトで検索すると氏名または名称が表示されます。顧問先名を伏せても、番号から特定できます。
置き換えは次の手順で行います。
1. 元の文章を手元のエディタにコピーする
AIの入力欄で直接書き換えず、手元のエディタで作業します。
2. 対応表を事務所内に作る
「A社=実名」のような対応表は事務所内に保存し、AIには渡しません。
3. 一括置換する
顧問先名・氏名・取引先名を対応表どおりに置き換え、番号類は削除します。
4. 残りを検索する
「様」「株式会社」「銀行」「@」、Tに続く数字、連続した数字などで検索し、置き換え漏れを探します。
5. 貼り付ける前に読み直す
役職・経歴・地名・病名など、組み合わせると人や会社が分かる記述がないかを確かめます。
ファイルを添付するときの追加確認
PDFやExcel、画像を添付する場合は、本文以外の場所にも情報が残ります。
- ヘッダー・フッター:試算表PDFの会社名、事務所名、印刷日時
- ファイル名・シート名:「山田商事_試算表.xlsx」のような名前
- Excelの非表示のシート・列・行、セルのコメントやメモ
- 画像の写り込み:スキャンやスクリーンショットの余白、背景の別資料、通知欄
見えない部分を一つずつ消す代わりに、必要な範囲だけを新しいファイルに写して渡す方法もあります。
マイナンバーは入力しない
番号法は、法定の場合を除いて、19条で特定個人情報の提供を、20条で収集・保管を制限しています。文章の下書きにマイナンバーは不要なため、入力しないことを所内ルールにします。年末調整の工程は年末調整でAIを使える工程・使えない工程で扱っています。
要配慮個人情報はさらに一般化する
個人情報保護法2条3項は、病歴や犯罪の経歴などを含む個人情報を「要配慮個人情報」と定めています。例えば医療費控除の相談メモなら、病名や通院先は書かず「医療費の支払いがある」程度まで一般化します。
置き換えても個人情報でなくなるとは限らない
同法2条1項は、他の情報と容易に照合して特定の個人を識別できるものも個人情報に含めています。事務所には対応表があるため、置き換えても法的に個人情報でなくなるとは限らないと考えられ、置き換えは入力してよいかの判断に代わるものではありません。
税理士法38条の守秘義務は使用人等にも及び(54条)、個人情報保護委員会も、個人情報を含むプロンプトを入力する場合は利用目的の範囲内かを十分に確認するよう注意喚起しています(2023年6月2日)。入力してよいかの判断の仕方は税理士の守秘義務と生成AIの判断表で整理しています。
なお、個人情報保護法の改正法(令和8年法律第56号)は2026年7月17日に公布されましたが、2026年10月10日時点で未施行のため、本記事は現行法で説明しています。改正点は個人情報保護法の令和8年改正で解説しています。
業務別プロンプト例:仮名化の例・期待する出力・確認点をセットで
6欄の型を使った例を4つ紹介します。いずれも型の例で、特定のサービスで出力を検証した結果ではありません。
顧問先への資料依頼・催促メールの下書き
不足資料の一覧は事務所で確認したものを渡し、AIには伝え方だけを任せます。
【役割】あなたは会計事務所の担当者です。
【前提】読み手はA社の代表者X様です。月次の資料の一部が届いていません。丁寧に、ただし期限ははっきり伝えてください。
【入力】以下の"""で囲んだ情報だけを使ってください。
"""
不足資料:〔例えば、○月分の通帳のコピー〕
提出期限:〔事務所で決めた日付〕
"""
【出力形式】件名と本文(300字以内)。丁寧さを3段階に変えて3案。
【禁止事項】入力にない資料名・日付を書かず、不明点は【要確認:○○】と書いてください。不利益をほのめかして急がせないでください。
確認者(AIには入力しない):担当者が宛先・資料名・期限を確認して送る
- 仮名化の例:「株式会社山田商事の山田太郎様」→「A社の代表者X様」
- 期待する出力:件名と本文3案。資料名が箇条書きで、期限が本文の前半にある
- 確認者が見る点:実名に戻すときの取り違え、期限の日付と曜日、資料名が事務所の一覧と一致するか、催促の強さ
件名:○月分の資料ご提出のお願い
A社 代表者X様(送信時に実名へ戻す)
いつもお世話になっております。○月分の月次処理のため、○月○日(○)までに次の資料のご提出をお願いいたします。
・○月分の通帳のコピー
お手数をおかけしますが、ご不明な点があれば担当までお知らせください。
制度のやさしい説明(顧問先向け)
制度の中身はAIに書かせず、事務所が原典で確認した要点を渡して言い換えだけを頼みます。
【役割】あなたは顧問先向けのお知らせを書く会計事務所の担当者です。
【前提】読み手は会計に詳しくない小規模事業者です。専門用語には短い説明を添えてください。
【入力】以下の"""で囲んだ要点は、事務所が原典で確認したものです。
"""
〔制度の名称、対象、要件、例外、適用時期と確認日〕
"""
【出力形式】見出し1つと本文400字以内。最後に「詳しくは担当者へ」の一文。
【禁止事項】入力にない要件・数値・適用時期を書かず、要件や例外を省略しないでください。「必ず」「誰でも」などの断定は使わず、対象かどうかは個別の確認が必要と書いてください。
確認者(AIには入力しない):制度を確認した担当者が要件と例外を照合し、税理士が表現を確認する
- 仮名化の例:個別の顧問先に合わせる場合も「A社(小売業)」のように業種だけ残す
- 期待する出力:見出しと400字以内の本文。入力した要件と例外がすべて書かれている
- 確認者が見る点:要件の抜け、例外の省略、成立前の改正案を決まったことのように書いていないか、「必ず」などの断定
面談記録の要約
要約では、決まったことと決まっていないことの取り違えが起きやすいため、出力の枠を先に指定します。
【役割】あなたは面談記録を整理する会計事務所の担当者です。
【前提】A社の代表者Xと担当者Zの面談メモを、所内の共有用に整理してください。
【入力】以下の"""で囲んだメモだけを使ってください。
"""
〔仮名化済みの文字起こし・メモ〕
"""
【出力形式】「決定事項」「宿題(担当・期限)」「未決事項」「次回の確認事項」の4見出しで箇条書き。
【禁止事項】メモにない内容を補わないでください。決まったか分からない内容は未決事項に入れ、担当や期限のない宿題は【要確認】と書いてください。
確認者(AIには入力しない):面談に出た担当者がメモと1項目ずつ照合する
- 仮名化の例:「山田社長」→「代表者X」、「経理の佐藤さん」→「従業員Y」。病気による休業などの話は「事情により」程度に一般化する
- 期待する出力:4つの見出しの箇条書き。宿題に担当と期限が付いている
- 確認者が見る点:発言者の取り違え、検討中の事項が決定事項に入っていないか、要配慮個人情報が残っていないか
手順書・チェックリスト化
ベテラン職員の口頭説明やメモを手順書にする使い方です。顧問先の情報はほとんど必要ありません。
【役割】あなたは会計事務所の業務マニュアルを作る担当者です。
【前提】職員が説明した〔月次の資料受付〕の流れを、新人が読んで作業できる手順書にしてください。
【入力】以下の"""で囲んだ説明だけを使ってください。
"""
〔説明の文字起こし・メモ〕
"""
【出力形式】番号付きの手順と手順ごとのチェック項目。最後に不明点の一覧。
【禁止事項】説明にない手順を補わず、会計ソフトの画面名は説明に出たものだけを使ってください。順番が不明な部分は【要確認:順番】と書いてください。
確認者(AIには入力しない):説明した職員が手順の抜けを、責任者が所内ルールとの食い違いを確認する
- 仮名化の例:例として出た顧問先名は「顧問先A」に、職員名は「入力担当」などの役割に置き換える
- 期待する出力:番号付きの手順、チェック項目、不明点の一覧
- 確認者が見る点:抜けた手順、所内ルールとの食い違い、画面名が実際のものと一致するか
仕訳そのものをAIに作らせる場合の範囲と、AI-OCRとの使い分けはChatGPTで仕訳はどこまで作れる?で扱っています。
月次報告のコメント・決算説明に生成AIを使う方法:数値は確定してから渡し、AIに計算させない
月次報告のコメントや決算説明は下書きしやすい一方、渡し方を決めないと「AIが出した数字」と「会計ソフトの数字」が混ざります。
1. 会計ソフトで月次を確定する
確定前の数値で作ると、修正のたびに文章も直すことになります。
2. 比較に使う数値を事務所で出す
前年同月比や増減額は、会計ソフトか事務所の集計表で出します。
3. 確定値と把握している事実だけを渡す
事実は、例えば「大口取引先からの受注が増えた」など事務所が顧問先から聞いたものに限ります。
4. AIには文章化だけを頼む
言い回しと、顧問先に確認したい質問の整理を任せます。
5. 担当者が数値を突き合わせる
出力のすべての数値を試算表と1対1で照合します。
計算させないのは、AIが計算できないからではなく(計算機能を持つサービスもあります)、顧問先に伝える数値の出どころを会計ソフトに一本化するためです。出どころが一つなら、何と突き合わせればよいかがはっきりし、数値が変わったときも直す場所が分かります。
【役割】あなたは会計事務所の担当者です。A社の月次試算表に添えるコメントの下書きを作ります。
【前提】読み手はA社の代表者Xです。専門用語は避けてください。
【入力】以下の"""で囲んだ数値と事実だけを使ってください。
"""
売上高:当月〔○円〕、前年同月〔○円〕、増減〔○円〕(事務所で算出)
把握している事実:〔例えば、大口取引先からの受注が増えた〕
"""
【出力形式】200〜300字のコメント案1つと、顧問先に確認したい質問を3つまで。
【禁止事項】入力した数値以外を使わず、合計・比率・増減を新たに計算しないでください。原因が入力にない場合は【要確認:原因】と書き、経営判断の推奨や資金繰り・税額の見通しは書かないでください。
確認者(AIには入力しない):担当者が数値を試算表と照合し、責任者が表現を確認する
期待する出力は、入力した数値だけを使ったコメントと、「受注の増加は来月以降も続く見込みですか」のような質問です。確認者は次の点を見ます。
- すべての数値が試算表と一致し、入力にない比率や合計が出ていないか
- 入力にない因果関係(「〜のため」)を断定していないか
- 資金繰りや税額について、約束と受け取られる表現がないか
決算説明も同じで、決算書の数値は確定版から渡し、文章だけをAIに任せます。
税務の調べものに生成AIを使う手順:AIは論点と検索語の提案まで
汎用の生成AIは、学習データの時点(ナレッジカットオフ)より後の改正を知らない場合があり、もっともらしい誤り(ハルシネーション)も起こします。OpenAIのヘルプ「Does ChatGPT tell the truth?」も、誤った日付や事実、存在しない引用・出典を生成することがあるとし、最終的な情報源にしないよう勧めています。税務の調べものでは、AIの役割を出発点づくりに限ります。
| 区分 | 具体例 | 扱い方 |
|---|---|---|
| AIに頼んでよいこと | 論点の候補、検索語、当たるべき資料の種類 | 調べる範囲を広げる材料にする |
| AIに答えさせないこと | 条文番号、通達番号、改正年度、適用時期、結論 | 原典で確かめる。AIが示した番号は検索語として扱う |
【役割】あなたは税務の調査を手伝うアシスタントです。結論は出さないでください。
【前提】〔例えば、法人の決算前の検討〕のための下調べです。結論は事務所が原典を確認して出します。
【入力】以下の"""で囲んだ事実関係だけを前提にしてください。
"""
〔仮名化した事実関係〕
"""
【出力形式】①考えられる論点の候補、②原典を探すための検索語、③当たるべき資料の種類、を箇条書きで。
【禁止事項】条文番号・通達番号・改正年度・適用時期は書かないでください。「該当します」という判断はせず、論点として示してください。
確認者(AIには入力しない):調査担当者が原典を確認し、調査メモに記録する
原典は次の順番で確かめます。
1. e-Gov法令検索で現行の条文を見る
「未施行あり」の表示や施行日ごとの「法令改正履歴」で、調べている時点の版か、未施行の改正が控えていないかを確認します。
2. 国税庁の法令解釈通達を見る
通達ごとに「(令和8年6月30日付改正分まで更新)」のような表示があり、更新時点は通達によって異なります。参照した通達の更新表示を控えます。
3. 質疑応答事例・文書回答事例を見る
どちらも、前提となる事実関係(文書回答事例は照会当時の法令も)が異なれば取扱いが異なりうると注記されています。自分の事案との違いを書き出します。
4. 国税不服審判所の公表裁決事例を見る
裁決の前提となった税制・税法が変わっている場合があると注記されているため、裁決時点の法令と現行法を見比べます。
5. 必要に応じて裁判例を見る
裁判所ウェブサイトの「裁判例検索」で判決などを検索できます。
通達だけで結論を出さない
通達は、国税庁長官などが所管の機関や職員に向けて発するもので(国家行政組織法14条2項)、法令そのものではありません。審判所が通達と異なる解釈で裁決することもあるため(国税通則法99条がその場合の手続を定めています)、AIが通達の一文だけを根拠に断定してきても、裁決や裁判例まで確かめます。
改正は「大綱・法案・成立・施行」の段階を書き分ける
財務省の「税制改正」のページには、年度ごとに大綱、法律・政令・省令、解説などが掲載されています。例えば、大綱や国会提出段階の法案をAIに要約させると、段階の区別が抜けて「決まった」と書かれるおそれがあります。改正年度や適用時期はAIに答えさせず、どの段階の情報かを原典で確認します。
調査メモの様式
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 論点 | 調べている問い(1メモ1論点) |
| 事実関係 | 仮名化した事実。結論に影響する前提を落とさない |
| 適用条文 | 法令名、条・項・号と、確認した版の施行日 |
| 通達 | 通達名と番号、更新表示 |
| 質疑応答事例・文書回答事例・裁決 | 名称と日付、自分の事案との前提の違い |
| 結論と留保条件 | どの前提が変われば結論が変わるか |
| 未確認事項 | 確認できなかったことと、確認する担当・期限 |
| 確認日・確認者・AIに聞いた内容 | AIの回答は根拠ではなく、参考にした論点・検索語として記録する |
生成AIの出力を確認する手順:【要確認】の解消と数値・根拠・表現・宛先の4点チェック
「人が確認する」と決めるだけでなく、何をどの順で見るかまで決めておくと漏れが減ります。顧問先に送る前は、次の手順で確認します。
1. 【要確認】をすべて解消する
文書内を「要確認」で検索し、0件になるまで元資料や顧問先への確認で埋めるか、その文を削ります。
2. 対応表で実名に戻す
対応表で記号を実名に戻し、記号や別の顧問先の名前が残っていないかを検索します。
3. 数値を元資料と1対1で照合する
すべての数字を試算表や元資料と突き合わせ、入力にない数字は削ります。
4. 根拠の原典を開く
条文・通達・資料名・日付は、e-Govや国税庁サイトで原典を開き、実在する現行のものかを確かめます。
5. 断定・約束の表現を直す
「必ず」「確実に」などを探し、事務所として約束できない表現を直します。
6. 宛先と添付を確かめる
送信直前に、宛先・CC・添付ファイルが同じ顧問先のものかを確かめます。
結果は次の表をチェック欄として使い、確認者と日付を残します。
| チェック項目 | 見るポイント | 確認者(例) |
|---|---|---|
| 【要確認】の残り | 検索して0件か | 担当者 |
| 数値 | 入力にない数字がなく、元資料と一致するか | 担当者 |
| 根拠 | 条文・通達・日付・資料名が実在し、現行のものか | 税理士・責任者 |
| 表現 | 断定、約束、節税の保証がなく、トーンが合っているか | 税理士・責任者 |
| 宛先 | 実名の取り違えや別の顧問先の情報がないか | 担当者 |
表は分担の一例です。税理士法41条の2は、税理士業務を行うため使用人等を使う税理士に監督義務を課しています。税理士業務に関わる文書はこの観点からも確認の流れに乗せ、それ以外の文書も同じ流れで扱うと運用しやすくなります。
顧問先向け文書の著作権に注意する
文化庁の資料は、AI生成物でも既存の著作物との類似性と依拠性が認められれば著作権侵害となりうること、AI生成物が著作物にあたるかはAI利用者の創作意図と創作的寄与の程度で判断されることを整理しています。所内では、例えば次の3点を決めておきます。
- 市販の解説書や他の事務所の記事を貼り付けて書き換えさせない
- 公開する文書は、公開前に似た文章がないか検索する
- 使ったプロンプトを台帳と一緒に残す
事務所の標準プロンプトとして共有・更新する方法
うまくいったプロンプトを個人のメモに置いたままにすると、職員ごとに使い方と確認の仕方がばらつきます。事務所の台帳にまとめ、版を管理して更新します。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| ID・用途・版 | P-001/不足資料の依頼メール/第3版 |
| 作成者・承認者 | 担当者Z/所長 |
| 入力してよい情報の区分 | 仮名化済みの資料名と期限のみ。口座番号は入れない |
| 使ってよいサービス・プラン | 事務所で契約した法人向けプランのみ |
| 最終更新日・変更理由 | 不足情報を【要確認】と書く方式に変更 |
| 関連する確認チェック | 【要確認】・数値・宛先:担当者/根拠・表現:責任者 |
更新のきっかけは、法令・通達の改正、使っているAIサービスの規約やデータの扱いの変更(各社ページの更新日を台帳に記録しておく)、出力の誤りや置き換え漏れの発見です。法人向けプランに指示文を保存して共有する機能がある場合も、正本は台帳に置き、機能側の内容は台帳の版に合わせて更新します。
教育と監督には、日本税理士会連合会の「税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に関する指針」(令和5年3月改訂)のモデル様式集にある「税理士事務所における情報管理チェックリストモデル」などが使えます。
同会のデジタル・システム委員会が2026年9月に策定した「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン(Ver1.0)」は、本文が会員専用のため本記事では内容を確認できていません。公表されているガイドラインの一覧は税理士のAIガイドライン一覧にまとめています。
総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」も、AI利用者が個人情報や機密情報を不適切に入力しないことなどを挙げており、所内ルールの根拠になります。台帳と確認手順を規程に落とし込む方法は税理士事務所の生成AI利用規程の作り方で、ひな形とともに紹介しています。
チャットでの下書きから業務の仕組みへ:汎用の生成AIでは足りなくなるところ
文章の下書きや要約は、ここまでの型と確認手順があれば汎用のチャットで対応できます。一方で、次のような作業が増えると、チャットに貼り付けるやり方では手間と確認の負担が大きくなります。
- 顧問先ごとの処理ルールを、毎回プロンプトに入れ直している
- 会計ソフトへの取込形式(CSVなど)に合わせて出力を加工している
- 誰が確認・承認・反映したかの処理記録が必要になる
- 量が多く、人がコピー&ペーストで回している
記帳の入力部門のように量の多い工程では、工程ごとにAIと人の分担を決める必要があります。その考え方は記帳代行業務のAI活用で整理しています。
会計ソフトへの反映まで自動化するなら、CSV・API・MCPのどれでつなぐかと、権限・承認の設計が論点になります(会計ソフトとAIの連携方法の比較)。
選択肢の一つが、本記事を運営する株式会社ZeimeeのFDE(Forward Deployed Engineer)型の支援です。会計士・税理士事務所に特化し、エンジニアが事務所の業務を確認したうえで、帳票の読み取り、仕訳候補の作成、チェック、会計ソフトへの取込データ作成などを業務に合わせて設計・実装し、導入後も使われ方を見て改善します。事務所ごとに設計するため、料金は個別見積もりです。AIの候補は担当者が確認・修正・却下・承認する設計で、セキュリティ方針では、承認と会計ソフトへの反映完了を別の段階として記録し、反映の失敗を成功として扱わないことを示しています。
例えば、手書きの日計表をAIで読み取った後も一行ずつの確定・転記が残っていた税理士事務所では、その確定作業を省き、JDL向けCSV作成のExcel5工程を1画面にまとめました(導入事例)。反対に、下書きや要約が中心で、法人向けプランと標準プロンプトで足りている事務所には、個別の仕組みづくりは必要ありません。
よくある質問
無料版や個人向けプランのChatGPTを業務に使ってよいですか?
顧問先情報を扱う業務は、事務所で契約・管理する法人向けプランに限るのが望ましいと考えられます。個人向けプランは「Improve the model for everyone」をオフにしても、フィードバックを送るとその会話全体が学習に使われることがあるとOpenAIは説明しています。法人向けプランも、フィードバック機能などでデータ共有に明示的に同意すると学習に使われることがあるとされるため、フィードバックの扱いも所内ルールで決めます。どのプランでも、入力してよいかは別に判断が必要です。
ChatGPT・Copilot・Geminiのどれを使えばよいですか?
本記事の型と確認手順は、特定のサービスを前提にしていません。選ぶときは、事務所の業務環境(Microsoft 365やGoogle Workspaceなど)、管理者がアカウントや設定をまとめて管理できるか、データの学習への利用や保持期間の扱い、の3点で比べ、契約前に公式ページを確認日とともに控えます。ベンダーへの質問項目はAIツール選定セキュリティチェックシートにまとめています。
面談を録音・文字起こしして、要約させてよいですか?
使えますが、文字起こしツール側のデータの扱い(学習への利用や保存先)も確かめます。文字起こしには家族の事情や健康状態などが入りやすいため、置き換えと一般化を済ませてから要約させます。録音すること自体も、面談の冒頭で顧問先に伝えておくと行き違いを防げます。
Excelの関数やマクロを作らせてもよいですか?
作らせる場合は、実データではなく列名とダミーの数行だけを渡します。できた式は小さなサンプルで検算し、マクロはファイルの書き換えや削除もできるため、中身を理解してから元ファイルのコピーで試します。顧問先のExcelを会計ソフトの取込形式に整える手順は仕訳インポート形式への変換手順で解説しています。
顧問先にAIを使っていることを伝える必要はありますか?
扱う情報と契約によって変わるため、個別の判断が必要です。観点は、個人情報を含めて入力するなら事務所の特定した利用目的の範囲内か(個人情報保護委員会の注意喚起)、顧問契約の守秘条項が外部サービスの利用をどう定めているか、顧問先から要望が出ていないか、の3つです。同意書や顧問契約書の見直し方はAI利用と顧問先の同意で解説しています。
職員が個人のアカウントで使うのを防ぐにはどうすればよいですか?
使ってよいサービスとプランを利用規程で指定して事務所契約のアカウントを用意し、個人のアカウントでは学習設定やデータの扱いを事務所で管理できないことを研修で伝えます。台帳の「使ってよいサービス・プラン」欄と規程をそろえておくと迷いません。
まとめ
- AIに任せるのは下書き・要約・形式変換・論点出しまで。数値・根拠・判断は事務所で確定する
- 6欄の型で指示し、入力前に顧問先名・個人名・番号類を置き換える。マイナンバーは入れない
- 月次コメントは確定値だけを渡して計算させず、税務の調べものはe-Gov法令検索→通達→事例→裁決の順に原典で確認する
- 送る前に【要確認】を解消し、数値・根拠・表現・宛先を確認する。プロンプトは台帳で共有・更新する
まずは資料依頼のメールなど顧問先情報をほとんど使わない作業で型を試し、うまくいったプロンプトを台帳に載せるところから始めてください。所内での導入の段取りは会計事務所のAI導入の進め方で解説しています。
参考資料
情報の確認日:2026年10月10日。別日の資料は個別に記載しています。
主な出典
- AI事業者ガイドライン(第1.2版)(総務省・経済産業省)
生成AIの利用と出力の確認
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起(個人情報保護委員会)
プロンプトに含める情報の確認
生成物を業務で使う際の確認
出典の詳細を見る
AIサービス提供会社の資料はリンクを設けず、名称のみ記載しています。
法令(e-Gov法令検索)
- 税理士法(昭和26年法律第237号)(デジタル庁 e-Gov法令検索、2025年10月1日施行の現行版)
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(デジタル庁 e-Gov法令検索、2026年10月1日施行の現行版。令和8年法律第56号による改正は未施行)
- 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- 国家行政組織法(昭和23年法律第120号)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- 国税通則法(昭和37年法律第66号)(デジタル庁 e-Gov法令検索、2026年6月24日施行の現行版)
- e-Gov法令検索(デジタル庁、2024年7月29日リニューアル)
官公庁・業界団体の資料
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会、2023年6月2日)
- 国税庁法人番号公表サイト(国税庁)
- 登録番号とは・登録番号に関する情報(国税庁 適格請求書発行事業者公表サイト)
- AIと著作権に関する考え方について(文化審議会著作権分科会法制度小委員会/文化庁、2024年3月15日)
- AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス(文化庁著作権課、2024年7月31日。AI利用者向けの項目は3-1-3、3-1-5、3-1-7など)
- AI事業者ガイドライン(第1.2版)(総務省・経済産業省、2026年3月31日。AI利用者の項目U-2、U-4、U-5など)
- 法令解釈通達(国税庁)
- 質疑応答事例(国税庁)
- 文書回答事例(国税庁)
- 公表裁決事例(国税不服審判所)
- 税制改正(財務省)
- 裁判例検索(裁判所)
- 税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に関する指針(日本税理士会連合会、2023年3月23日掲載)
- 税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドラインの策定について(日本税理士会連合会、2026年9月30日の会員向けお知らせ。本文は会員専用のため未確認)
AIサービス提供会社の資料(リンクなし)
- OpenAI「OpenAI におけるエンタープライズプライバシー」(2026年1月8日更新)
- OpenAI Help Center「Data controls in ChatGPT」
- OpenAI Help Center「Does ChatGPT tell the truth?」
- OpenAI Help Center「Best practices for prompt engineering with the OpenAI API」
- Google「ビジネスで効果を発揮する AI プロンプトの書き方 | Gemini for Workspace」
この記事の編集方針・執筆者
Zeimee編集部は、会計事務所のAI導入・開発を支援する株式会社Zeimeeの編集部です。
本記事は、e-Gov法令検索の条文、個人情報保護委員会・文化庁・総務省・経済産業省・国税庁・国税不服審判所・財務省・裁判所の資料、日本税理士会連合会の公表資料といった一次情報を中心に調査・整理しています。AIサービスに関する記述は各提供会社の公式ページで確認しました。情報の確認日は2026年10月10日です。
プロンプト例と文面の完成形の例は指示文と仕上がりの型を示すもので、特定のサービスで出力を検証した結果ではありません(実機検証は行っていません)。作業時間の削減効果などの数値は掲載していません。法令の解釈は一般的な整理であり、個別の事案は専門家や所管官庁にご確認ください。
