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記帳代行業務のAI活用|会計事務所の入力部門・経理BPOの工程別分担

入力部門・経理BPO向け

記帳代行とAIどう分担する?

工程別の役割分担

受付・読取・確認・取込
運営元・掲載情報について

本記事は、記事内で紹介している「Zeimee」を提供する株式会社Zeimeeが執筆・運営しています。会計ソフト各社(弥生会計 Next、マネーフォワード クラウド会計)のサポート情報は2026年10月10日時点の公開情報をもとに記載し、外部への誘導リンクは設けていません。仕様は変更される場合があるため、最新の情報は各社のサポート情報をご確認ください。

記帳代行にAIを活用しても、AI-OCR(AIで画像やPDFの文字を読み取る技術)や生成AIで速くなるのは読み取りまでで、確認、会計ソフトに合わせた加工、取込エラーの手直しが残り、工数が思ったほど減らないことがあります。

この記事では、会計事務所の入力部門の責任者や記帳代行・経理BPO(経理業務の外部委託)の運営者向けに、どの工程にAIを入れれば工数が減るか、品質・納期・委託元への説明をどう保つか、税理士業務との境界はどこかを一次情報をもとに整理します。入力部門の方は、本文の「委託元」を顧問先、「顧問税理士」を所内の担当税理士と読み替えてください。

この記事の結論
  • 読み取りと候補の作成だけにAIを入れても、確認と取込に工数が移るだけになりがち。件数の多い工程から、検算・コード変換・形式チェックをプログラムとルール台帳で確定させ、人が確認する範囲を絞れるかを試し、確認・修正まで含む工数で効果を判断する。
  • 人が確定するのは、初めての取引、顧客ごとの例外、金額と税区分の3つの場面。
  • 委託元とは、判断の分担、資料の提出期限、納期、納品形式、AIを使う工程を文書で合意し、月次の報告で説明する。
  • 読み取ったデータは書類の保存に代わらない。スキャナ保存・電子取引データの保存の要件は別に満たす。
  • 記帳の代行自体は税理士業務(税理士法2条1項)に含まれないと考えられる。税理士でないBPOが申告書の作成や税務相談に及ぶと52条、その作業に名義を貸した税理士は37条の2の問題になりうる。
  • 確認・修正の時間を含む1件あたりの工数を、1委託元・1工程から測って広げる。

記帳代行の工程を7つに分けて、AIを入れる順番を決める

「入力作業」とひとまとめにしたままAIを入れると、読み取りは速くなっても、前後の工程に作業が移るだけになりがちです。まず工程に分け、どこに時間がかかっているかを把握します。

記帳代行の7工程と、よくある詰まり表は左右にスクロールできます。
工程主な作業よくある詰まり
1. 受付証憑・通帳・カード明細などを委託元から回収する資料の不足、期間の抜け、再送待ち
2. 仕分け委託元・期間・書類の種類ごとに分ける委託元の混在、重複、記帳に使わない書類
3. 読み取りAI-OCRや生成AIで日付・金額・取引先をデータにする手書きやかすれによる判読不能、桁のずれ
4. 仕訳候補の作成勘定科目・補助科目・税区分を付ける新しい取引先、按分、顧客ごとの例外
5. 確認・修正候補を確認し、修正・却下・承認する全件の目視、判断基準が担当者ごとに違う
6. 取込データ作成・取込会計ソフトごとの形式に変換して取り込む形式の違い、コードの未変換、取込エラー
7. 納品・保存・報告納品し、保存方法と質問事項を委託元と確認する保存要件の確認漏れ、質問の積み残し

AIを入れるとボトルネックは読み取りの後に移る

AIが短くするのは主に3の読み取りと4の候補作成です。5の確認・修正と6の取込データ作成は件数に応じて残り、取り込める形になっていなければ人が転記することになります。例えば、ある税理士事務所では、手書きの日計表を生成AIで読み取った後も、一括で取り込める形式になっていなかったため一行ずつ確定する操作が残っていました(導入事例)。

AIを入れる工程の優先順位を決める4つの基準

工程ごとに件数と作業時間を記録したうえで(項目はKPIの章)、次の4つの基準で順番を決めます。4つとも当てはまる工程から始め、判断を定型化できない工程は、ルールが固まるまで人の確認を中心にします。

AIを入れる工程を選ぶ基準(例)表は左右にスクロールできます。
基準確認すること当てはまりやすい例
件数×1件あたりの時間月間の件数と、確認・修正を含む作業時間毎月まとまった量が届く通帳・カード明細の入力
書式のそろい方同じ様式の書類が多いか、データで受け取れるか毎月同じ様式で届く日計表、データで取得できる明細
判断の定型化科目・税区分の判断を台帳のルールとして書けるか毎月同じ取引先への同じ支払い
誤りの機械的な検出検算・件数の照合・形式チェックで誤りを見つけられるか合計欄のある帳票、貸借や件数で照合できるデータ

業務全体でのAIの使いどころは税理士・会計事務所のAI活用|12業務の早見表を参照してください。

記帳代行の業務効率化のための工程別分担表|AI・プログラム・人

AIは、書式のそろわない書類の読み取りや、過去の例からの候補づくりに向きます。プログラム(ルール処理)は、検算・コード変換・形式チェックのように、同じ入力から常に同じ結果を出す処理に向きます。人は、前例のない判断と承認を担います。

記帳代行の工程別分担表(例)表は左右にスクロールできます。
工程AIが候補を出すプログラムで確定させる人が判断・承認する
1. 受付督促や質問の文案受付台帳への記録、前月と比べた資料の抜けの検出受け取り方と提出期限の取り決め、督促
2. 仕分け書類の種類の推定・分類の候補フォルダやファイル名による振り分け、重複の検出分類できない書類の扱い
3. 読み取り日付・金額・取引先・摘要の読み取り合計と明細の検算、日付が対象期間内かの確認判読不能・検算不一致の箇所の確定
4. 仕訳候補の作成過去の仕訳と台帳をもとにした科目・税区分の候補台帳に登録済みの取引先への科目の割り当て新しい取引先・按分・例外の判断
5. 確認・修正要確認とした理由の提示貸借一致、税区分と取引日の組み合わせのチェック修正・却下・承認
6. 取込データ作成・取込初回設定時の列の対応づけの候補科目・補助科目・税区分コードの変換、形式どおりの出力取込結果の確認、再処理の判断
7. 納品・保存・報告報告や質問事項の文案件数・例外・取込エラーの件数の集計報告内容の確認、委託元への説明

AIの種類と使い分け

向く工程はAIの種類によって異なります。製品の比較は記帳自動化ツールおすすめ10選で扱い、ここでは種類ごとの一般的な向き不向きを示します。

AIの種類と向く工程(一般的な例)表は左右にスクロールできます。
種類向く工程注意点
汎用の生成AI(対話型)様式がそろわない書類の読み取りの補助、文案や変換表の下書き出力が毎回同じとは限らない。入力データの扱いを規約・契約で確認する
AI-OCRの専用サービス請求書・領収書など、件数の多い書類の読み取り読み取り結果の確認は残る。会計ソフトの取込形式に合うかを確認する
会計ソフトの明細取込・自動仕訳の機能銀行・カードの明細のデータでの取込と、ルールによる仕訳候補製品により機能が異なる。連携設定とルールの管理者を決める
業務に合わせた個別開発顧客ごとの例外、会計ソフトの混在、事務所独自の帳票開発と保守の体制が必要。判断のルールが固まっていない段階には向かない

読み取る前に、データで受け取れないかを確認する

通帳やカード明細をAI-OCRで読む前に、委託元が明細をデータ(CSVや会計ソフトとの連携)で用意できないか、請求書を電子データで受け取れないかを確認します。データで受け取れれば、読み取りとその確認を省けます。受け取る経路と提出期限を委託元ごとにそろえると、受付と仕分けもプログラムで処理しやすくなります。電子で受け取った請求書は電子取引データとして保存します(電子帳簿保存法の章)。

AIの出力は「候補」として扱う

AIの出力は、担当者が確認・修正・却下・承認する候補として扱います。生成AIは同じ入力でも出力が変わることがあり、判断の理由を後から確かめにくいためです。判断が繰り返される取引は、ルール台帳とプログラムに移すと結果が安定し、確認する箇所も減ります。汎用の生成AIに個人情報を入力する場合は、利用目的の範囲内か、入力データが機械学習など応答以外の目的に使われないかを確認します(個人情報保護委員会の注意喚起、2023年6月2日)。使い方は会計事務所のChatGPT・生成AIの使い方、確認項目は会計事務所の生成AIセキュリティ対策で解説しています。

記帳代行にAIを入れても人が確認する3つの場面

1. 初めての取引

新しい取引先や科目、普段より大きい金額の取引には、過去の仕訳という手がかりがありません。取引の中身は証憑だけでは判断できないこともあるため、こうした条件に当たるものは要確認に振り分け、必要に応じて委託元に確認します。

2. 顧客ごとの例外

同じ支出でも、顧客によって科目・補助科目・按分が違うことがあります。担当者の記憶に頼ると引き継ぎで抜けるため、顧客別の仕訳ルール台帳に記録し、担当者とAIが同じ台帳を参照します(顧問先別の仕訳ルール台帳の作り方)。

3. 金額と税区分の確定

金額は、例えば振込手数料や源泉徴収税額が差し引かれた入金、1枚の領収書に複数の税率が混在するもの、手書きの桁があいまいなもの、家事按分が必要なものを人が確定させます。税区分は、取引日と相手方の登録状況で扱いが変わるため、人が確定させます。

税区分の確定で確認する主な点(国税庁の資料より)表は左右にスクロールできます。
確認項目内容記帳での注意
登録の有無適格請求書発行事業者以外の者(免税事業者等)からの課税仕入れは、原則として仕入税額控除ができない登録番号の有無と登録の状況を確認する
免税事業者等からの仕入れの経過措置控除割合は令和8年9月30日までが80%、令和8年10月1日〜令和10年9月30日が70%。令和8年10月1日以後に開始する課税期間は、一の免税事業者等からの仕入れのうち、その年又は事業年度で税込1億円を超える部分には適用できない取引日ごとに割合を分け、帳簿に経過措置の適用を受ける旨を記載する
少額特例基準期間の課税売上高1億円以下等の事業者は、令和11年9月30日までの税込1万円未満(1回の取引で判定)の課税仕入れについて、帳簿の保存のみで控除できる委託元が対象の事業者かを事前に確認する

2026年9月以前と10月以後の取引が混在する月は、経過措置の割合に特に注意します(インボイス7割控除(経過措置70%)の仕訳と記帳対応)。

判断の基準を委託元と文書で合意する

  • 受託側で決める:台帳に登録済みの取引の科目・税区分、明らかな読み取り誤りの修正
  • 委託元に確認する:内容がわからない支出、事業用か私用か、新しい取引先
  • 顧問税理士に確認する:税区分や経過措置の適用の判断、決算・申告に影響する処理

入力担当の役割と承認の体制

AIを入れると、入力担当の仕事は打ち込みから確認と例外の判断に移ります。役割ごとに判断してよい範囲を決めておくと、承認の基準がぶれにくくなります。

入力部門・BPOの役割と判断してよい範囲(例)表は左右にスクロールできます。
役割主な作業判断してよい範囲
受付担当資料の回収、受付台帳の記録、不足資料の督促資料の過不足の判断まで。仕訳の判断はしない
確認担当要確認に回った候補の確認・修正・却下台帳のルールの範囲での修正。台帳にない判断は承認者に回す
承認者確認済みの仕訳の承認、抜き取りでの確認新しい取引先や例外の扱いの確定。税務の判断は税理士に回す
ルール台帳の管理者台帳への登録・変更、変更履歴の管理、担当者への周知台帳の変更の判断。税務の判断を伴う変更は税理士と確認する

確認を担当する人には台帳の読み方と要確認の基準を教え、判断の理由を記録に残してもらいます。全件の目視のままでは確認の工数は減らないため、チェックを通過し台帳と一致した仕訳は抜き取りで確認し、要確認を重点的に見る体制へ段階的に移します(記帳代行の品質管理|AI-OCR導入後のダブルチェック)。

会計ソフトが混在するときの取込データ作成と取込エラーの切り分け

会計ソフトごとに、取込ファイルの列の構成、項目数、文字コード、日付の形式、科目の指定方法(名称かコードか)が異なります。顧客×会計ソフトごとに、科目・補助科目・部門・税区分の対応とファイル形式・会計期間をまとめた変換表を作ると、取込データの作成をプログラムで確定させやすくなります。

取込前のチェックリスト

取込前のチェック項目表は左右にスクロールできます。
チェック項目確認内容プログラム化
件数読み取った件数、確定した仕訳の数、取込ファイルの行数が一致しているかしやすい
貸借仕訳ごと・ファイル全体で、借方と貸方が一致しているかしやすい
期間取引日が会計期間内で、締め済みの期間に入っていないかしやすい(会計期間と締めの状況の情報が必要)
コード変換表にない科目・補助科目・税区分が残っていないかしやすい
記号摘要の改行、ダブルクォーテーション、全角の数字が混じっていないかしやすい
税区分経過措置の割合などが取引日と合っているか取引日と割合の組み合わせはしやすい。適用できるかは人が確定する

これらは人が目で見るより、プログラムで毎回同じ基準で確認するほうが漏れを防げます。

会計ソフトのサポート情報にある取込エラーの例

2026年10月10日時点で確認した各社の公開情報です。外部リンクは設けていないため、最新の情報は各社のサポート情報で確認してください。

会計ソフトのサポート情報にある取込エラーの原因の例表は左右にスクロールできます。
会計ソフト(資料名)公開されている原因の例確認日
弥生会計 Next(サポート情報「インポートのエラー一覧」)文字コードや項目数(25・27・28項目)の不正、必須項目の未入力、会計期間外の取引日、貸借の不一致、勘定科目の未設定、日付形式の不正、年度締め後のインポートなど2026年10月10日(ページに更新日の記載なし)
マネーフォワード クラウド会計(FAQ「仕訳インポート時にエラーメッセージが表示されます。対処方法を教えてください。」)日付の表記、摘要中のダブルクォーテーションや改行、半角整数以外の金額、貸借の不一致、300行を超える複合仕訳、取引日時点で施行されていない経過措置の控除割合など2026年10月10日(ページ記載の更新日は2026年7月9日)

取込エラーを切り分ける順番

原因がファイル全体にあるのか、特定の行にあるのかを先に分けると、修正が早くなります。

取込エラーの切り分け(一般的な例)表は左右にスクロールできます。
症状疑う原因直す場所
ファイル全体が読み込めない文字コード、項目数、区切り文字出力の設定、会計ソフト側の取込設定
特定の行だけエラーになる日付・金額の形式、改行や記号の混入該当行のデータ、出力前のチェック
科目・補助科目が見つからない変換表の不足、会計ソフト側のマスタの未登録変換表、委託元の会計ソフトの設定
会計期間外になる会計期間の設定、年度締め済みの期間委託元の会計ソフトの状態
税区分・控除割合のエラー取引日と税区分の組み合わせ仕訳候補の税区分、変換表

「承認した」と「取り込めた」を分けて記録する

担当者が承認した時点と、会計ソフトへの取込(反映)が完了した時点は別のものです。失敗した仕訳を処理済みとして扱うと、納品後の計上漏れにつながります。両者を別の状態として記録し、失敗したものは再処理の対象として分けます(考え方の例:セキュリティ方針)。

Zeimeeが税理士事務所で開発した例には、JDL向け取込CSVの作成でExcel間を行き来していた5工程を1画面にまとめたものがあります(導入事例)。特定の現場での開発例で、同じソフトでも出力形式や設定により追加の対応が必要です。

変換の具体的な手順は仕訳インポート形式への変換手順、CSV・API・MCPの違いは会計ソフトとAIの連携方法の比較で解説しています。

記帳代行の生産性を測るKPI|工数・差し戻し率・納期・例外件数

AIの効果は、読み取りの時間ではなく、確認・修正・取込の手直しまで含めた工数で測ります。品質と納期の指標も並べて見ないと、工数が減った代わりに差し戻しが増えた変化を見落とします。

記帳代行のKPIの定義(例)表は左右にスクロールできます。
KPI定義見るポイント
1件あたりの工数受付から取込完了までの作業時間(確認・修正・再取込を含む)÷処理件数証憑単位か仕訳単位かを導入の前後でそろえる
修正率担当者が修正・却下した候補の数÷仕訳候補の数書類の種類・委託元ごとに見る
差し戻し率委託元や顧問税理士から指摘を受けた件数÷納品した仕訳の数指摘の内容(科目、税区分、漏れ、重複)を分類する
納期遵守率期限内に納品できた委託元の数÷対象の委託元の数遅れの原因が資料の未着か社内の処理かを分ける
例外・要確認の件数人の判断に回した件数とその理由同じ理由が続くなら台帳に登録できないか検討する
取込エラーの件数取込エラーの件数と再取込の回数原因(形式・マスタ・期間・税区分)を分類する

導入前にベースラインを測る記録シート

AIを入れる前に、同じ定義で2〜4週間ほど現状を記録します。月次の締めで作業量が大きく変わる場合は、1か月分を通して測ります。記録シートの列は、例えば次のとおりです。

ベースラインの記録シートの列(例)表は左右にスクロールできます。
列記入する内容・例
日付・担当者例:作業日、担当者名
委託元・書類の種類例:A社、通帳
工程例:5. 確認・修正
件数(証憑単位か仕訳単位かを固定)自社の実績を記入
作業時間(確認・修正・再取込を含む)自社の実績を記入
修正・却下の件数自社の実績を記入
要確認の件数と理由例:新しい取引先、判読不能
取込エラーの件数と原因例:形式、マスタ、期間、税区分

同じ記録を月次の報告にも使うと、委託元に品質を説明しやすくなります(報告に載せる項目は導入手順の章)。費用対効果の計算は会計事務所のAI費用対効果の測り方で解説しています。

AI-OCRで読み取った後の保存|電子帳簿保存法のスキャナ保存と電子取引

AI-OCRで作ったCSVや仕訳データは、元の書類の保存に代わりません。紙で保存するか、スキャナ保存の要件を満たして電子で保存するかは、保存義務者である委託元が決めます。記帳を委託しても、株式会社が会計帳簿を作成し、閉鎖の時から10年間保存する義務(会社法432条)は会社に残ります。

スキャナ保存のうちAI-OCRと関係する要件

スキャナ保存は、要件に従って電子化することで紙の保存に代えられる制度です(電子帳簿保存法4条3項)。AI-OCRの運用と関係しやすい要件は次の3つです(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」令和8年7月 問10・問21、「はじめませんか、書類のスキャナ保存」)。

AI-OCRと関係するスキャナ保存の要件(重要書類の場合)表は左右にスクロールできます。
要件内容AI-OCRとの関係
解像度・階調200dpi以上、カラー(赤・緑・青各256階調以上)。一般書類はグレースケールも可AI-OCR用に縮小・トリミングした画像では満たさないことがある
入力期間受領後おおむね7営業日以内(早期入力方式)か、処理規程を定めて最長2か月の業務処理サイクルの後おおむね7営業日以内読み取りの順番待ちで期間を過ぎないようにする
タイムスタンプか訂正削除の履歴タイムスタンプの付与か、訂正削除の履歴が残るシステムへの格納読み取りを終えただけでは足りず、入力期間内に済ませる

ほかの要件(帳簿との相互関連性、検索機能など)は問10で確認できます。紙は、入力期間内に読み取って同等確認をした後なら即時に廃棄して差し支えないとされますが、入力期間を過ぎたものは紙も保存します(同 問3)。廃棄するかどうかは、委託元に要件を確認してもらったうえで判断してもらいます。

電子取引データは電子のまま保存する

メール等で受け取ったPDFの請求書などは、改ざん防止や検索の要件に沿って電子データのまま保存します(同法7条)。基準期間の売上高5,000万円以下の者などは、ダウンロードの求めに応じられれば検索の要件が不要です(国税庁パンフレット、令和6年11月)。印刷した紙が届いた場合も、元のデータが委託元で保存されているかを確認します。

記帳代行への委託で認められないこと

国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」(令和8年7月)問20は、帳簿を電子データで作成・保存する場合の記帳代行業者への委託を認めたうえで、保存義務者は通常の業務処理サイクルで定期的にデータの還元を受ける必要があるとしています。課税期間の終了後にまとめて記帳する委託や、業者の所在地を保存場所にすることは認められません。問22では、PDFでの納品に加えて検索性のあるCSV形式等のデータも渡す対応が示されています。納品の頻度と形式は委託元と合意しておく項目に含めます。

個別の判断は、顧問税理士や所轄の税務署に確認してください。

記帳代行と税理士業務の境界|税理士法52条・37条の2

AIで税額の試算まで簡単にできると、知らないうちに税理士業務に踏み込むおそれがあります。

税理士業務と記帳の代行の違い

税理士業務は、他人の求めに応じ、租税に関し、税務代理・税務書類の作成・税務相談を行うことを業とすることです(税理士法2条1項)。税理士でない者は税理士業務を行えず(52条)、違反は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象です(59条1項4号)。「業とする」は反復継続の意思があればよく、有償であることを要しません(税理士法基本通達2-1)。

52条が禁じるのは2条1項の税理士業務で、記帳の代行は2条1項に含まれません。このため、記帳の代行自体は52条の対象外と考えられます。なお、2条2項は、税理士が税理士業務に付随して財務書類の作成や記帳の代行などを行えることを定めた規定です(国税庁「税理士制度のQ&A」問2-3は、税理士が税理士業務に付随しない記帳の代行等を行っても税理士法違反にはならないと説明しています)。

記帳代行の周辺業務と税理士法上の位置づけ表は左右にスクロールできます。
業務位置づけ税理士でない者の場合
会計帳簿の記帳の代行財務に関する事務(2条2項)。税理士業務ではない2条1項の税理士業務に含まれず、52条の対象外と考えられる
決算書(財務書類)の作成財務書類の作成(2条2項)。税理士業務ではない同上。申告書の作成と一体で行う場合は注意
申告書などの税務書類の作成税務書類の作成(2条1項2号)行えない(52条)
税務署への申告などの代理税務代理(2条1項1号)行えない(52条)
課税標準等の計算についての具体的な助言税務相談(2条1項3号)行えない(52条)

境界になりやすい場面

税務書類の「作成」は自己の判断に基づいて作成すること(基本通達2-5)、税務相談は具体的な質問に対して答弁・指示・意見表明をすること(同2-6)です。課税標準等には、税額の計算上控除する金額なども含まれます(国税通則法2条6号)。例えば、経過措置で何%控除できるかを個別の取引に当てはめて委託元に回答したり、AIが出した控除額の試算を助言として伝えたりすると、税務相談に当たりうると考えられます。事実の確認と税務上の助言は分け、税務判断の質問は顧問税理士に回します。

名義貸し(37条の2)と会計法人のケース

税理士は、52条に違反する者などに名義を利用させてはなりません(37条の2。罰則は59条1項2号)。国税庁「税理士制度のQ&A」問6-23は、非税理士が作成した申告書の下書きを税理士がそのまま入力して電子申告する例や、転記誤りだけを確認して署名する例を挙げ、作成した非税理士は52条違反になるとしています。

日本税理士会連合会 綱紀監察部の事例集(令和6年12月)は、会計法人が税理士事務所から会計業務を受託し、従業員が会計業務だけに従事するケースを適正(ケース⑦)、会計法人の従業員が申告書作成など税理士業務の補助に従事したケースを37条の2・52条違反(ケース⑧)としています。BPOが受託する範囲を会計業務に限ることが前提になると考えられます。年末調整など周辺業務の扱いは内容により判断が分かれるため、本記事では断定しません。

監督と守秘義務

税理士は、税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは監督する義務を負い(41条の2)、情報通信技術を利用するなどして適切に監督していれば対面でなくてもよいとされています(基本通達41の2-1)。税理士(38条)と使用人等(54条)は、退職後も含め、正当な理由なく「税理士業務に関して知り得た秘密」を漏らしてはなりません。入力部門の職員が記帳だけを担う場合にこれらがどこまで及ぶかは条文上明確ではないため、所内規程や雇用契約でも秘密保持を定めておくことが考えられます。

外部のBPOとの関係は、所内の使用人等への監督と区別し、実際の業務形態と契約を確認します。38条の「正当な理由」は本人の許諾又は法令に基づく義務があることとされているため(基本通達38-1)、税理士事務所が顧問先の情報を外部のBPOに渡して委託する場合は、顧問契約などで顧問先の許諾を得ているかを確認する必要があると考えられます。あわせて契約で秘密保持や再委託を定め、個人情報保護法上の委託先の監督を行います。同意の取り方はAI利用に顧問先の同意は必要?で整理しています。

個別の判断について

この章は、税理士法と国税庁・日本税理士会連合会の公開資料をもとにした一般的な整理です。個別の業務の判断は、税理士・税理士会・所轄の国税局などに確認してください。

委託元のデータをAIで扱うときの確認事項(個人情報保護法)

現行法:委託と委託先の監督

個人データの取扱いの委託に伴う提供は第三者提供に当たらず(個人情報保護法27条5項1号)、委託元は委託先を監督します(25条)。データの入力は委託の例として挙げられています。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)3-4-4は、委託する業務に必要のない個人データを提供しないことは当然とし、委託先の選定、委託契約の締結、取扱状況の把握を求め、再委託は事前報告や承認などで確認することを望ましいとしています。受託側は、委託元から確認されやすい項目(委託元と合意しておく項目の「データの扱い」)を説明できるようにしておきます。

クラウドサービスは、サービス事業者が個人データを取り扱わないこととなっている場合は本人同意も委託先の監督も不要とされる一方、利用者自身の安全管理措置は必要とされています(同委員会Q&A Q7-53・Q7-54)。生成AIサービスは入力データを処理して応答を作るため、この保存を想定した整理を当てはめられるかは個別判断です。学習などへの利用だけでなく、契約と実際の処理を確認します。

漏えい時の報告

要配慮個人情報、財産的被害のおそれ、不正の目的、本人1,000人超のいずれかに当たる漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある場合は、委員会への報告と本人への通知が必要です(26条、施行規則7条)。銀行口座の情報だけなら直ちには該当しないとされる一方(同委員会Q&A Q6-14)、クレジットカード番号やネットバンキングのパスワードとの組合せなどを含む場合は該当しうるとされています。委託先は委託元に通知すれば報告・通知の義務を免れるため(26条1項ただし書・2項)、委託元への連絡手順と期限を契約で決めておきます。

改正法(主要部分は未施行)で変わる委託先の規律

令和8年改正法(令和8年法律第56号、2026年7月17日公布)は、原則として公布から2年を超えない範囲内で政令で定める日に施行され、2026年10月10日時点で主要な改正事項は未施行です(一部の附則は施行済み、罰則の一部は2027年1月17日施行)。同委員会事務局の説明資料によると、改正後は、委託先が受託業務に必要な範囲を超えて個人データ等を取り扱うことが禁止されます。また、委託先が取扱いの方法を自ら決めず、委託元の指示どおり機械的に処理する場合(例:指示に従った機械的な入力作業)で、契約で取扱いの方法の全部などに合意したときは、安全管理などを除き義務が原則として免除されます。AIで科目や税区分を判断するなど、委託先が方法を決める業務は対象外となる可能性があります(個人情報保護法の令和8年改正と会計事務所のAI利用)。

関連記事と業界団体の動き

税理士事務所が委託元になる場合は、税理士法38条の守秘義務も前提になります(税理士法の章)。

日本税理士会連合会は2026年9月30日付で、「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン」の策定を会員向けに案内しています。本文は会員向けのため、本記事では内容に触れていません。

記帳代行・経理BPOのAI活用は1委託元・1工程から始める

1. 対象を1つ選ぶ

優先順位の基準に当てはまる委託元と工程を1つ選びます。

2. 現状を測る

記録シートで2〜4週間ほど現状を記録します。

3. ルールを台帳にする

科目・税区分の判断と顧客ごとの例外を書き出します(仕訳ルール台帳の作り方)。

4. 分担を決める

要確認に回す条件と、承認する人を決めます。

5. 並行運用で比べる

従来の方法と並行して処理し、結果と工数を比べます。

6. 委託元と合意する

次の表の項目を、委託元と文書で確認します。

7. 広げる

結果をもとに、ほかの委託元・工程へ広げます。

委託元と合意しておく項目(品質・納期・説明)

納期の遅れや差し戻しは、資料の提出や質問への回答の期限が決まっていないことから起きることもあります。品質・納期・説明に関わる項目を1枚にまとめ、契約や業務の取り決めに入れておきます。

委託元と合意しておく項目(例)表は左右にスクロールできます。
項目決めておく内容の例
資料の提出提出期限、提出の経路、データで受け取る資料(明細・電子の請求書)
納期と還元の頻度月次など定期的な納品とその期限(電子の帳簿では期間終了後のまとめ記帳は不可。一問一答 問20)
質問への回答委託元の回答期限と、回答がない場合の扱い
判断の分担受託側で決める範囲、委託元に確認する範囲、税理士に確認する範囲
AIを使う工程AIを使う工程と人が確認する工程、利用するAIサービス
納品形式会計ソフトへの取込データ、PDF、検索できるデータ(CSVなど)の渡し方
保存証憑と帳簿の保存場所・方法(保存の要件は委託元が満たす)
データの扱いAIに渡す個人データの範囲、利用するAIサービス(保存場所・学習への利用の有無・アクセスできる人)、再委託と事前の報告・承認、安全管理措置、漏えい時の連絡、契約終了時の返却・削除
月次報告納品件数、委託元に確認した事項、取込エラーとその対応、要確認の件数

導入全体の進め方は会計事務所のAI導入の進め方|7ステップを参照してください。

既製のツールで吸収しきれない工程がある場合

顧客ごとの例外や、会計ソフトが混在する取込データの加工が既製のツールでは残る場合、業務に合わせて仕組みを設計する方法もあります。Zeimeeは、会計士・税理士事務所に特化したFDE(Forward Deployed Engineer)型のAI導入・開発支援です。エンジニアが事務所の業務を確認し、帳票の読み取り、仕訳候補の作成、チェック、取込データの作成などを業務に合わせて設計・実装し、導入後も使われ方を見ながら改善します。AIの候補は担当者が確認・修正・却下・承認する設計で、料金は個別見積もりです。

一方、処理件数が少ない場合、既製のAI-OCRと会計ソフトの標準連携で足りる場合、判断のルールがまだ固まっていない段階では、個別の開発は向いていません。まずはルール台帳と分担表を整えるところから始めるのが現実的です。

よくある質問

記帳代行に税理士の資格は必要ですか?

52条が税理士でない者に禁じているのは2条1項の税理士業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)で、記帳の代行は含まれないため、資格は不要と考えられます。ただし、申告書の作成や課税標準等の計算についての具体的な助言に及ぶと、無償でも52条の問題になりえます。個別の判断は税理士や税理士会に確認してください。

AI-OCRの読み取り精度はどれくらいを目安にすればよいですか?

一律の目安はありません。帳票の種類や手書きの有無で変わるため、自社の帳票で、書類の種類ごとの修正率と確認・修正の時間を測って判断してください(KPIの章)。

生成AIに通帳や請求書の画像を入力してもよいですか?

利用目的の範囲内か、入力データが学習など応答以外の目的に使われないかの確認は、個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月2日)で求められています。受託側は別に、委託契約で認められた範囲かも確認します。税理士事務所は守秘義務との関係の整理も必要です(税理士の守秘義務と生成AI)。

委託元にAIを使っていることを伝える必要はありますか?

契約の再委託の条項や個人データの取扱いの範囲によっては、事前の報告や承認が必要です。義務がない場合も、AIを使う工程と人が確認する工程を説明しておくと、品質を説明しやすくなります。

インボイスの経過措置(70%)の判定もAIに任せられますか?

候補の提示まではAIに任せられますが、取引日ごとの割合と相手方の登録状況は人が確定させます。個別の取引への当てはめを委託元に助言すると税務相談に当たりうるため、顧問税理士に確認する運用にします(経過措置70%の記帳対応)。

顧客ごとに会計ソフトが違う場合、どこから手を付ければよいですか?

処理件数が最も多い会計ソフトから、取込ファイルの仕様と科目・税区分の変換表を作ります。取込前のチェックをプログラムにしてから次のソフトに広げると、エラーを切り分けやすくなります。

まとめ

  • 記帳代行を7つの工程に分け、件数・書式・判断の定型化・誤りの検出のしやすさでAIを入れる順番を決める
  • 検算・コード変換・形式チェックはプログラムとルール台帳で確定させ、人は要確認と、初めての取引・顧客ごとの例外・金額と税区分を確定する
  • 資料の提出期限、納期、判断の分担、納品形式を委託元と文書で合意し、KPIの記録を月次の報告に使う
  • 読み取ったデータと書類の保存は別。委託しても、期間終了後のまとめ記帳や業者の所在地での保存は認められない
  • 記帳の代行と税理士業務(申告書の作成・税務相談)を分け、名義貸しにならない体制にする
  • 個人情報は、現行法の委託先の監督に加え、改正法(主要部分は未施行)の動向も確認する

まずは1つの委託元・1つの工程で、現状の工数と修正率を測るところから始めてみてください。

参考資料

情報の確認日:2026年10月10日。別日の資料は個別に記載しています。

主な出典

出典の詳細を見る

会計ソフト各社のサポート情報は、本文中に名称と確認日を記載しています。

この記事の編集方針・執筆者

Zeimee編集部は、会計事務所のAI導入・開発を支援する株式会社Zeimeeの編集部です。

本記事は、法令(e-Gov法令検索)、国税庁、個人情報保護委員会、総務省・経済産業省、日本税理士会連合会の公開資料を中心に調査し、記帳代行の工程とAIの分担を整理しました。情報の確認日は2026年10月10日です。

AIツールや会計ソフトの実機検証は行っていません。取込エラーの例は各社のサポート情報を同日に確認したものです。令和8年改正の個人情報保護法は主要な改正事項が確認日時点で未施行のため、現行法と改正後を分けて記載しています。KPIや分担表は一般的な例で、特定の事業者の実績値ではありません。確認日時点で、本記事は税理士などの専門家の監修を受けていません。個別の判断は、税理士・税理士会・所轄の税務署や国税局・個人情報保護委員会などにご確認ください。

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