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会計事務所の生成AIセキュリティ対策|顧問先情報を守るために確認する7項目

会計事務所のAI対策

顧問先情報を守る

7項目

セキュリティ確認

入力・権限・承認を確認
運営元・掲載情報について

本記事は、会計士・税理士事務所向けのAI導入・開発支援「Zeimee」を提供する株式会社Zeimeeが執筆・運営しています。Google・Microsoftの情報は2026年10月10日、ChatGPT・Claudeの設定に関する情報は2026年10月11日時点の各社の公開情報に基づきます。他社サイトへのリンクは設けず、資料名と確認日を記載しています。各社の条件は変更される場合があるため、利用前に最新の規約と設定をご確認ください。

会計事務所で生成AIを使うときのセキュリティ対策は、入力する情報だけでなく、権限・承認・記録まで含めて決める必要があります。顧問先の資料を読み取る前に、どこへ情報が渡り、誰が確認するかを明らかにしましょう。

この記事では、導入前に確認したいセキュリティ対策を7項目に分け、資料の受領から会計ソフトへの反映・保存までの業務の流れに沿って、法令・ガイドラインの該当箇所と一緒に整理します。

この記事の結論

導入前に確認するのは、次の7項目です。

  1. 入力する情報の区分
  2. 入力先のサービスと契約
  3. 顧問先ごとのデータ境界とアクセス権限
  4. 会計ソフト・金融機関の認証情報の保護
  5. AI候補の承認と会計ソフトへの反映の区別
  6. 処理記録と誤入力・漏えい時の初動
  7. 最終確認の手順と判断する人

規約・設定・契約を確認し、事務所の業務に当てはめて判断します。法人向けプランや学習しない設定だけで入力可否を決めないことが要点です。

会計事務所が導入前に確認するAIセキュリティ7項目チェックリスト

所長・DX担当が導入前に確認する項目です。根拠欄は一次資料の該当箇所で、印刷して確認欄に印を付けて使えます。

生成AI導入前の7項目チェックリスト表は左右にスクロールできます。
確認項目所長・DX担当が確認すること主な根拠詳しい記事確認
1 入力する情報の区分業務ごとに、入力してよい情報・加工すれば入力できる情報・入力しない情報を決めているかPPC注意喚起(2023年6月2日)、個人情報保護法17条・18条、番号法19条・20条入力判断表□
2 入力先と契約学習利用、保持期間、人によるレビュー、Web検索や外部連携、保存先の国を、規約と設定で確認したかPPC注意喚起②、Q&A 7-53・7-54・12-3、PPC注意喚起(2024年3月25日)ベンダーへの質問票□
3 データ境界とアクセス権限顧問先ごとにデータが分かれ、担当外の顧問先が見えないか。共有アカウントを使っていないか個人情報保護法23条・24条、通則編10-6生成AI利用規程の作り方□
4 認証情報会計ソフトや金融機関のIDとパスワードを、プロンプト・共有メモ・スクリプトに書いていないか通則編3-5-3-1(2)、規則7条2号会計ソフトとAIの連携方法□
5 承認と反映AI候補の承認と会計ソフトへの反映完了を区別し、反映の失敗が分かるかAI事業者ガイドライン第5部、IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」(生成結果の確認)記帳代行の品質管理□
6 記録と事故時の初動誰が・いつ・何を入力し、承認・反映したかが残り、誤入力や漏えい時の連絡先と手順があるか通則編10-3(2)・3-5-2、規則7条〜9条、基本通達41の2-1令和8年改正と漏えい報告□
7 最終確認と責任数値・科目・税区分を原資料と突き合わせる手順と、最終確認者を決めているか税理士法33条・41条の2・45条2項、基本通達45-2仕訳チェックにAIを使う範囲□

規程の形にまとめるなら税理士事務所の生成AI利用規程の作り方、ベンダーへの確認にはAIツール選定セキュリティチェックシートを使ってください。

会計事務所のAIセキュリティが一般企業と違う3つの理由

「機密情報を入力しない」「法人向けプランを使う」といった基本は一般企業と共通ですが、会計事務所には次の3つの事情が加わります。

理由1:税理士には法律で定められた守秘義務がある

税理士法38条は、正当な理由なく、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らしたり窃用(自ら又は第三者のために利用すること。基本通達38-3)したりすることを禁じ、税理士でなくなった後も同様としています。職員などの使用人等にも、54条で同じ義務があります。違反は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象で(59条1項3号)、告訴がなければ公訴は提起できません(同条2項)。

国税庁の税理士法基本通達38-1は「正当な理由」を本人の許諾又は法令に基づく義務があることとし、38-2は「秘密」を、依頼人の陳述や自己の判断で知った事実のうち一般に知られていない事項や、関係者が他言を禁じた事項としています。法人顧問先の売上や取引条件も秘密に当たり得ます(詳しくは税理士の守秘義務と生成AI)。

理由2:顧問先から個人データの取扱いを委託される立場でもある

給与計算や年末調整で顧問先の従業員の個人データを扱う場合、事務所は取扱いの委託を受ける立場(委託先)になると考えられます。個人情報保護委員会(以下、PPC)の通則編ガイドラインは、従業員100人以下の「中小規模事業者」に安全管理措置の簡易な手法を例示していますが、委託を受けて個人データを取り扱う者と、過去6か月以内のいずれかの日に本人の数が5,000を超えた者は除かれます。

小規模な事務所でも簡易な手法だけを前提にできない場合があるため、委託に当たるかは契約内容に沿って個別に確認してください。記帳代行や経理BPOの委託関係は記帳代行・経理BPOのセキュリティ対策で扱っています。

理由3:出力を確認して申告書を作成する手順が必要

税理士は申告書等に署名しなければならず(税理士法33条)、相当の注意を怠り、真正の事実に反して税務代理や税務書類の作成をしたときは、戒告又は2年以内の業務停止の懲戒処分の対象になります(45条2項)。AIの出力の確認も、漏えい対策と並ぶ論点です(確認項目7)。

業務の流れで見る生成AIのリスク地図(受領から保存まで)

「入力しない」だけでは、AIの前後の工程を見落とします。業務の流れに起きやすいことと確認項目を重ねると次のとおりです(一般的な例で、特定の事故事例ではありません)。

会計業務の工程別に見る生成AIのリスク地図表は左右にスクロールできます。
工程起きやすいことの例確認項目詳しい記事
1. 受領資料に個人番号、要配慮個人情報(障害者控除や医療費控除の資料などに含まれ得る)、口座情報が混ざる項目1・3入力判断表
2. 読み取り個人向けアカウントや事務所が認めていないAIに資料を上げる(シャドーAI)。保存先が外国のサーバになる項目2ベンダーへの質問票
3. 候補作成1つの会話やナレッジに複数の顧問先の資料が混ざり、別の顧問先の情報が出力に紛れる。ハルシネーションが出る項目3・7ChatGPTと仕訳の範囲
4. 確認原資料と突き合わせずに候補を確定する。確認範囲が担当者ごとに違う項目5・7仕訳チェックにAIを使う範囲
5. 承認誰が承認したか分からない。作成者と承認者が同じで、誰も見直していない項目5・7記帳代行の品質管理
6. 会計ソフトへの反映IDやパスワードをチャットやスクリプトに書く。取込の一部失敗が成功に見える項目4・5会計ソフトとAIの連携方法
7. 保存・記録誰がいつ何を入力・承認したか残らず、事故時に影響範囲を特定できない項目6令和8年改正と漏えい報告
ChatGPT・Claudeを実際に使う前に

このリスク地図を設定に落とし込むなら、まず利用中のプランとワークスペースを確かめ、学習利用、メモリ・過去会話の参照、外部アプリの権限、共有範囲、保存・削除の順に確認します。有料の個人プランと法人向け契約は分けて考えます。

学習利用をオフにしても、会話履歴や保存済みメモリが自動で消えるとは限りません。ChatGPT・Claudeの設定場所と確認表を確認項目2にまとめています。設定を変えるだけで、顧問先の資料を入力してよいことにはなりません。

シャドーAIは、事務所が把握・許可していないAIを職員が業務に使うこと、ハルシネーションは、AIが事実と異なる内容をもっともらしく出力することです。IPAとAIセーフティ・インスティテュート(AISI)の「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」(2026年4月2日)は、資料を検索して回答に使う仕組み(RAG)で、メールなどの外部資料に仕込まれた指示が社内情報の流出を招くおそれを挙げています。顧問先の資料を分けることに加え、信頼できない外部資料を検索対象に混ぜないことも確認します。

AIで作った仕訳を会計ソフトへ反映する段階では、確認漏れや反映の失敗が帳簿に直接影響します。記帳の工程ごとのAIの使い方は記帳代行業務のAI活用で解説しています。

確認項目1 生成AIに入力する情報の区分

最初に決めるのは「何を入力しないか」です。全面禁止か全面解禁かではなく、情報を区分して業務ごとに扱いを決めると、職員が迷わず運用できます。

入力する情報の4区分(例)表は左右にスクロールできます。
区分情報の例扱いの考え方
A 公開情報・一般的な質問制度の一般的な内容の質問、公表資料の要約、文章の言い換え事務所が認めたサービスで利用し、出力は一次情報で確認する
B 顧問先が特定されない形に加工した情報顧問先名・個人名・住所・口座番号などを除き、取引の性質だけを残した設例情報の組合せで特定されないかを確認して利用する
C 顧問先の秘密・個人データ試算表、仕訳データ、従業員の給与データ、取引先名入りの請求書契約と設定を確認した、事務所が認めたサービスに限り、業務ごとに判断する
D 個人番号・要配慮個人情報・認証情報マイナンバー、障害や診療の事実が分かる資料、会計ソフトや金融機関のIDとパスワード入力しない運用を基本にする

業務別の詳しい判断表は税理士の守秘義務と生成AIにまとめています。

個人情報保護委員会の注意喚起で確認すること

PPCの「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)は、個人情報を含むプロンプト(AIへの指示文)の入力が、特定した利用目的の達成に必要な範囲内かを十分確認するよう求めています。また、本人の同意なく入力した個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合は法違反となる可能性があるため、提供事業者が機械学習に使わないことなどを十分確認するよう求めています。

名前を伏せても特定され得る

区分Bは、名前を消すだけでは足りないことがあります。例えば顧問先名を伏せても、所在地・業種・主要な取引先・特徴的な金額の組合せから推測できる場合があるため、「何を残すと特定されやすいか」まで決めておきます。

マイナンバー(個人番号)には別のルールがある

個人番号を含む特定個人情報は、番号法で法定の場合を除き提供も収集・保管もできず(19条・20条)、個人番号関係事務の再委託には委託者の許諾が必要です(10条)。PPCの番号法Q&A(Q3-12)は、クラウド事業者が個人番号を含むデータを取り扱わない契約で適切にアクセス制御している場合などは委託に当たらないとしていますが、生成AIに個人番号を入力する必要がある場面は限られるため、入力しない運用が無難と考えられます(年末調整は年末調整でAIを使える工程・使えない工程)。

要配慮個人情報と法人顧問先の秘密

要配慮個人情報(個人情報保護法2条3項)には、心身の機能の障害があること、健康診断等の結果、医師等による診療や調剤が行われたことなどが含まれ(施行令2条)、医療費控除や障害者控除の資料に含まれ得ます。また法人顧問先の情報は、個人情報でなくても税理士法38条の秘密に当たり得ます。

確認項目2 入力先のサービスと契約(学習利用・保持期間・人によるレビュー)

同じ会社のAIでも、個人向けと法人向け、さらに機能ごとに条件が違うことがあります。契約上の扱いと、利用者・管理者が変更できる設定の両方を確認します。

ChatGPT・Claudeを使うときの設定チェック

以下は2026年10月11日に公式資料で確認した設定と、会計事務所での確認方法です。ここでいうGPTはChatGPTのWeb版を中心に扱い、APIは別欄に分けます。Workは調査・資料作成など複数の作業を進めるChatGPTの機能です。Workを使う場合の確認点は該当行に明記します。英語の設定名は公式資料の表記です。日本語画面での表示や操作は実機未検証で、プラン・更新状況によって利用できる項目が異なります。

最初に確認するのは契約と利用中のアカウント

ChatGPTのPlus・ProやClaudeのPro・Maxを契約していても、個人向けプランの条件を確認する必要があります。ChatGPTのBusiness・Enterprise・Edu、ClaudeのTeam・Enterpriseなどの業務用契約とは区別し、実際に入力する先が事務所の認めたワークスペースかを確かめてください。

ChatGPTのBusiness・Enterprise・EduとClaudeの商用サービスは、通常、業務データをモデル学習に使わない扱いです。ただし、任意のデータ共有やフィードバック、保存期間、外部連携の条件は別に確認します。

ChatGPT:データコントロール、メモリ、アプリの権限

ChatGPTの設定場所と会計事務所での確認方法表は左右にスクロールできます。
確認すること設定・確認場所会計事務所での確認方法
学習利用Web・モバイルの Settings > Data controls(設定 > データコントロール)個人向けでは利用中の学習利用の許可状態を確認。業務の入力をモデル改善に提供しない運用にする。法人ワークスペースの通常の非学習扱いと混同しない。
メモリ・過去会話の参照Web版の Settings > Personalization(設定 > パーソナライズ)にあるメモリの設定顧問先情報を別の会話の文脈に持ち込まないよう、参照する情報と利用要否を確認。Workでもアカウント・ワークスペースのメモリ設定が適用される。
外部アプリの読取・書込権限対応する法人ワークスペースの Workspace apps > Action control / App permissions必要な接続だけを許可し、Action controlで読取専用などに絞る。App permissionsで変更時の確認を求めるなど、実行前の承認も設定する。利用可否と実行時の確認は別。
保存・削除(Workを使う場合)会話、Library、プロジェクト、保存済みメモリそれぞれの管理画面と、ワークスペースの保持設定会話を削除してもLibraryのファイルや保存済みメモリが残り得る。プロジェクトの資料も別に管理する。接続解除だけで外部サービスの原本が消えるとは考えない。

アプリの確認方式には、対応する環境で「Always ask」「Any changes」などがあります。例えば「Any changes」は対応する読取を確認なしで進め、変更時に確認を求める設定です。会計ソフトへの書き込みや外部送信を許可する前に、接続先の権限と実行時の確認を両方点検します。

Claude:Privacy、Memory、Connectors、共有

Claudeの設定場所と会計事務所での確認方法表は左右にスクロールできます。
確認すること設定・確認場所会計事務所での確認方法
個人プランの学習利用Settings > Privacy > Help Improve our AI modelsFree・Pro・Maxは、アカウントの実際の設定値を確認し、業務の入力を学習に提供しない運用ならオフにする。オフは会話履歴の削除ではなく、開始済み・完了済みの学習を戻すものでもない。安全目的などの例外も確認する。
メモリ・過去会話検索Settings > Memory の Search and reference chats / Generate memory from chats(旧環境では Settings > Capabilities)現在のメモリは個人のFree・Pro・Maxで初期設定がオン、Team・Enterpriseは各メンバーでオフ。過去会話検索はPro・Max・Team・Enterpriseで利用できる。顧問先情報を会話をまたいで参照させない運用なら各項目を確認する。Pause memoryは停止、Reset memoryは消去。会話の削除だけで生成済みメモリが消えるとは限らない。
一時的な会話(Incognito)プロジェクト外の新規チャット右上にあるゴーストアイコン履歴・メモリ・学習には使われないが、通常30日保持される。Team・Enterpriseでは管理者のエクスポートにも含まれる。「保存ゼロ」「管理者に見えない」機能とは考えない。
外部接続・ツールの権限Customize > Connectors。会話単位では + > Connectors。Team・Enterpriseの組織側でもツール権限を確認不要な接続を外し、必要な範囲だけを許可する。組織で対応するツール権限は Needs approval(承認が必要)やBlocked(禁止)に絞る。接続先は独自の規約で処理するため、Claudeの学習設定だけでは判断しない。
会話・プロジェクトの共有会話の Share と Settings > Privacy > Shared chats。プロジェクトは Share > General access個人プランの公開リンクは、リンクを持つ人がログインせず閲覧できる。招待共有と公開リンクを区別する。組織内のプロジェクトも、顧問先の資料は Only people invitedなど担当者だけに絞り、不要な共有を解除する。
Enterpriseの保持期間Ownerが Organization settings > Data and Privacy で設定チャットとプロジェクトの両方を確認する。保持期間は最低30日で、未設定では無期限。プロジェクト内の会話にはプロジェクトの保持期間が優先するため、会話だけの設定では足りない。

事務所で決める初期設定と、職員が確認する順番

  1. 事務所が認めた契約・ワークスペースを選び、個人アカウントとの使い分けを確認する。
  2. 学習利用の許可状態を確認し、メモリや過去会話参照は必要な範囲に限る。顧問先ごとに会話・資料を分ける。
  3. 外部接続は必要なものだけにし、読取範囲、書込権限、実行前の確認を別々に設定する。
  4. 共有先・保存先・保持期間・削除方法を決め、誰が設定を確認したかを記録する。

認証も合わせて点検します。利用できる多要素認証を有効にし、組織のSSO(事務所の認証基盤によるログイン)は「設定済み」と「利用を強制している」を区別します。ClaudeのTeam・Enterpriseでは Organization and access > Authentication の Require SSO for Claudeを確認します。個人利用は、ログインに使うGoogleアカウントやメールの認証設定も確認対象です。

APIの設定はChatGPT・Claudeのチャット設定と別

APIを使うツールでは、チャット画面の学習設定やIncognitoがそのまま適用されるとは考えません。OpenAI APIとClaude APIは通常モデル学習に使わない扱いですが、ログ、ファイル、会話状態の保存は別です。OpenAI APIは通常、不正利用監視ログを最大30日保持し、Claude APIも通常は入力・出力を30日以内に削除する扱いで、いずれも機能や安全・法令・契約による例外があります。

ゼロ保持(ZDR)は別途の承認・契約や対応機能の確認が必要です。「APIだから保存しない」「学習しないから顧問先情報を自由に入れられる」とは判断せず、入力区分と契約上の許可に戻って確認してください。

個人向けと法人向けで扱いが違う例

2026年10月10日に確認したGoogleの「Gemini アプリ プライバシー ハブ」は、個人向けのGeminiアプリでは人間のレビュアー(委託先を含む)がチャットの一部を確認するため、機密情報を入力しないよう求めています。アクティビティの保存をオフにしても、チャットは72時間アカウントに保持されるとしています。一方「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」は、Workspaceではチャットやファイルを人間がレビューせず、許可なくドメイン外のモデル学習にも使わないとしています。

ChatGPTなどの個人向け・法人向け・APIの条件を読む観点は、税理士の守秘義務と生成AIの比較表でも整理しています。

法人向けでも機能ごとに条件が違う例

2026年10月10日に確認したMicrosoft Learnの「Microsoft Copilot および Microsoft Copilot Chat におけるエンタープライズ データ 保護」は、プロンプトと応答を基盤モデルの学習に使わないとする一方、Bing検索サービスに送るWeb検索のクエリは、Microsoftが独立したデータ管理者となる別の条件で処理されるとしています。Web検索や外部連携をオンにしたときの条件も確認対象です。

契約・設定の確認欄

  • 学習利用の初期設定と、設定を変更できる人が明らかか
  • 会話・添付資料・外部連携の保持期間と削除方法を確認したか
  • Web検索や外部連携の有効・無効を管理できるか
  • 管理者が職員の利用状況を確認できるか

入力が「提供」や「委託」に当たるかの考え方

PPCのQ&A(Q7-53)は、クラウドへの個人データの保存等が提供や委託に当たるかを、サービス事業者が個人データを取り扱うことになっているかで判断するとしています。契約で取り扱わない旨を定め、適切にアクセス制御している場合などは提供に当たらず、委託先の監督(法25条)も生じませんが、自らの安全管理措置は必要です(Q7-54)。生成AIは入力内容を処理して応答を作るため、保存を想定するQ&A 7-53の整理を当てはめられるかも、契約と仕組みを確認して個別に判断します。

PPCは2024年3月25日の注意喚起で、規約上データを監視・分析等できた、保守用IDでアクセスでき技術的な制御がなかった、実際に取り扱っていた、という事情から、クラウド事業者を委託先と判断しています。規約の文言だけでなく実際の運用まで確認が必要です。

外国の事業者・サーバを使う場合

外国の事業者が管理するサーバでも、事業者が個人データを取り扱わないことになっていれば、外国にある第三者への提供には当たりません。ただし、その国の制度を把握したうえでの安全管理措置(外的環境の把握)と、その内容を本人が知り得る状態に置くことが必要です(Q&A 12-3・10-25)。

職員の個人アカウント利用(シャドーAI)

IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」解説書(組織編)は、未許可サービスの禁止、個人アカウントでの業務利用の制限、オプトアウト(学習利用などを拒否する設定)、約款の確認を対策に挙げています。まずは使ってよいサービスの一覧を職員に示すことが出発点です。

ベンダーへの質問はAIツール選定セキュリティチェックシート、事務所内のルールは生成AI利用規程の作り方、顧問先への説明や同意はAI利用に顧問先の同意は必要?で扱っています。

確認項目3 顧問先ごとのデータ境界とアクセス権限

担当外の顧問先が検索に出る、複数の顧問先の資料が会話履歴に残る、共有アカウントの権限を止められない、といった状態を先に洗い出します。個人情報保護法23条は安全管理措置を、24条は従業者の監督を求めています。通則編10(別添)は、基本方針の策定、取扱規律の整備、組織的・人的・物理的・技術的安全管理措置、外的環境の把握を示しています。

技術的安全管理措置の4つの柱

通則編10-6は、技術的安全管理措置として、アクセス制御(担当者と扱うデータの範囲を限定すること)、アクセス者の識別と認証、外部からの不正アクセス等の防止、情報システムの使用に伴う漏えい等の防止を挙げています。

AIツールで確認すること

  • 事務所・顧問先ごとにデータが分かれ、担当外の顧問先が画面や検索結果に出てこないか
  • 1つの会話やナレッジ(AIに参照させる資料の置き場)に、複数の顧問先の資料を混ぜない運用か
  • 多要素認証(パスワードに加えて別の手段で本人確認する方式)を使えるか
  • 共有アカウントを使わず、退職・異動時にアカウントを止める手順があるか
  • 会話履歴とアップロードした資料の保持期間・削除方法を確認したか
  • 業務に使う端末を管理し、OSやセキュリティソフトを更新しているか

確認項目4 会計ソフト・金融機関の認証情報をAIに渡さない

会計ソフトやインターネットバンキングのIDとパスワードは、プロンプト、共有メモ、AIに読ませるファイル、スクリプトに書かないことを原則にします。AIに会計ソフトを操作させる仕組みでも、認証情報が会話に含まれない設計にします。

送金・決済機能のあるサービスのIDとパスワードは報告対象の例

PPCの通則編3-5-3-1(2)は、財産的被害が生じるおそれのある漏えい等(規則7条2号)の例として、クレジットカード番号や、送金・決済機能のあるウェブサービスのログインIDとパスワードの組合せを含む個人データの漏えいを挙げています。会計ソフトの認証情報がこの類型に当たるかは、利用できる機能と事実関係によります。報告対象の判定とは別に、アカウントで閲覧できる顧問先のデータへの影響を調べます。

確認すること

  • 認証情報がどこに保存され、画面やログに表示されないか
  • 権限を最小にできるか(例えば、閲覧だけ、特定の事業所だけに限る)
  • 失効・再発行と、退職時に認証情報を変更する手順があるか

会計ソフトとAIをつなぐ方式には、CSVの取込、API(ソフト同士がデータをやり取りする窓口)、MCP(AIと外部のツールやデータをつなぐ仕組み)などがあり、方式によって権限と承認の設計が変わります。比較は会計ソフトとAIの連携方法を比較で解説しています。

確認項目5 AI候補の承認と会計ソフトへの反映を分ける

AIが作るのは仕訳やチェック結果の「候補」です。担当者が確認し、修正・却下・承認する流れを、ツールの機能と事務所の運用の両方で決めておきます。

外部の資料に仕込まれた指示にも備える

受け取ったメールや資料の中の指示を、AIが利用者の指示として扱ってしまうことがあります。間接プロンプトインジェクションと呼ばれる問題で、IPAは対策がまだ不完全だと説明しています。外部資料の検索範囲を絞り、会計ソフトの書き込み権限を最小にし、反映する内容を人が確認する設計を組み合わせます。

「承認済み」と「反映完了」は別の状態

承認した状態と、会計ソフトへの反映が完了した状態は別です。CSV取込やAPI連携は一部だけ失敗することがあり、承認した時点で処理が終わったように見える仕組みでは、未反映の仕訳に気づけません。反映の失敗が成功として扱われず、エラーとして見えるかを確認します。

例えば、CSV取込で一部の行がエラーになったら

例えば承認済みの100行をCSVで取り込み、3行が科目コードの不一致でエラーになったとします。どの行が未反映かが分かり、修正して再実行するか担当者の確認に回すかを選べることが確認のポイントです。

はい・いいえで確認する運用項目

  • 承認者・承認日時・承認した内容が残るか
  • 未反映と反映失敗を一覧で確認できるか
  • 再実行時に重複登録を防ぎ、登録済みか確かめられるか

人の判断を挟む根拠

総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」第5部は、人間の判断を介在させることで予期せぬ事故を防げると述べています。IPAの資料も、生成AIの回答には誤りがあり得るため使用時の確認を求めています。作成者と承認者を分けるかは事務所の規模に合わせて決めます(記帳代行の品質管理)。

参考として、本記事の運営元であるZeimeeは、セキュリティと承認の考え方で、税理士事務所を基本のデータ境界とすること、会計ソフトの認証情報を画面や通常の処理記録に表示しないこと、承認と会計ソフトへの反映完了を分けて管理し、反映に失敗した処理を成功として扱わないことなどを基本方針として公開しています。確認項目3〜6は、検討中のベンダー各社に同じ観点で尋ねてみてください。

確認項目6 処理記録と、誤入力・漏えい時の初動

何を記録しておくか

通則編10-3(2)は、運用状況を確認するため利用状況等を記録することが重要としています。税理士法基本通達41の2-1も、使用人等が補助した業務の履歴をICT(情報通信技術)で確認する方法を監督の例に挙げています。誰が・いつ・どの顧問先の何を・どのAIに入力し、誰が承認・反映したかを残せば、監督にも事故時の調査にも使えます。

  • 記録に秘密情報を残しすぎず、保持期間と閲覧権限を決めたか
  • 顧問先ごとの事故時の連絡先と代替担当者が決まっているか

誤入力や漏えいに気づいたときの初動

通則編3-5-2が示す5つの措置を、AIへの誤入力に当てはめると次の順番になります。

1. 責任者への報告と被害の拡大防止

すぐに責任者へ報告し、入力先で会話やファイルを削除できるか、パスワード変更が必要かを確認します。

2. 事実関係の調査と原因の究明

いつ、誰が、どのサービスに、何を入力したかを処理記録から確認します。

3. 影響範囲の特定

対象の顧問先と本人の範囲、情報の種類(要配慮個人情報や認証情報を含むか)を特定します。

4. 再発防止策の検討・実施

入力区分や設定の見直し、職員への教育を行います。

5. PPCへの報告と本人への通知

報告対象の事態なら報告と通知を行います。委託を受けた情報は、まず委託元の顧問先へ通知します。

報告対象になる4つの類型

PPCへの報告(法26条1項)と本人への通知(同条2項)が必要になるのは、個人情報保護法施行規則7条の4類型のいずれかに当たる場合です。いずれも「おそれ」の段階から対象で、1号から3号は人数を問いません。

漏えい等報告の対象となる4類型(規則7条)表は左右にスクロールできます。
類型内容会計事務所で想定される例
1号 要配慮個人情報要配慮個人情報を含む個人データの漏えい等例えば、医療費控除や障害者控除の資料にある診療や障害の情報
2号 財産的被害のおそれ不正に使われると財産的被害が生じるおそれのある個人データの漏えい等例えば、クレジットカード番号や、送金・決済機能のあるサービスのIDとパスワード
3号 不正の目的のおそれ不正の目的をもって行われたおそれがある行為による漏えい等例えば、不正アクセスでAIサービスのアカウントが乗っ取られ、個人データが漏えいしたおそれがある場合
4号 1,000人超本人の数が1,000人を超える漏えい等例えば、多数の顧問先の従業員データをまとめて扱っていた場合

4類型のいずれも、高度な暗号化など個人の権利利益の保護に必要な措置を講じた個人データは除かれます。単にパスワードが付いているだけで除外できると判断しないでください。

報告の期限

速報は事態を知った後「速やかに」、確報は知った日から30日以内(3号の事態は60日以内)です(規則8条)。通則編3-5-3-3は速報の目安を概ね3〜5日以内とし、法人ではいずれかの部署が知った時点が起算点になります。報告フォームはマイナンバーを含むかで異なるため、報告時はPPCの「漏えい等の対応とお役立ち資料」で最新情報を確認してください。

委託を受けて扱っている情報の場合

顧問先から委託を受けて扱う個人データなら、委託元の顧問先へ速やかに通知すれば事務所のPPCへの報告義務は免除され、顧問先が報告を行います(法26条1項ただし書、規則9条、通則編3-5-3-5)。事務所は報告への協力が求められるため、顧問先ごとの連絡先を決めておきましょう。

誤入力のすべてが報告対象になるわけではない

通則編3-5-1-2は、メールの誤送信や設定ミスによる公開状態などを漏えいの例とする一方、第三者に閲覧される前にすべて回収した場合は漏えいに当たらないとしています。AIへの誤入力がどの事態に当たるかは、入力先での扱いや情報の種類などの事実関係で変わり、一律には決まりません。判断に迷う場合はPPCや専門家に確認してください。

令和8年改正の方向と施行時期

令和8年の改正法(令和8年法律第56号)は2026年7月17日に公布され、施行は原則として公布日から2年を超えない範囲内とされています。2026年10月10日時点で主要な改正事項は未施行です。一部の附則は施行済みで、罰則の一部は2027年1月17日施行です。PPCの資料では、委託先の義務の見直し、本人通知の緩和、課徴金制度の導入のほか、委員会規則で違法な個人データの第三者提供を報告対象に加えることなどが予定されています。改正点は個人情報保護法の令和8年改正と会計事務所のAI利用で解説しています。事故対応の手順づくりには、IPAの中小企業向けガイドライン第4.0版の付録8(インシデント対応の手引き)も参考になります。

確認項目7 最終確認と責任(署名・相当の注意・監督義務)

署名義務と注意義務を分けて確認する

税理士法33条は、税務書類を作成した税理士の署名義務を定めています。責任のすべてを署名だけで決める条文ではありません。AIを使う場合も、45条2項の相当の注意や、契約上の義務に照らして確認手順を整える必要があると考えられます。

「相当の注意」は確認の手順で示す

45条2項は「AIを使うと違反」という規定ではなく、相当の注意を怠り、真正の事実に反して税務代理や税務書類の作成をした場合などの懲戒を定めたものです。基本通達45-2は「相当の注意を怠り」を、職業専門家としての知識経験に基づき通常その結果の発生を予見し得るのに予見できなかったことと定義しています。AIの出力に誤りが含まれ得ることはIPAの解説書でも指摘されているため、どの項目を誰が原資料と突き合わせるかを手順にしておくことが要点と考えられます。

職員のAI利用と監督義務

41条の2は、使用人等が税理士業務を適正に行うよう監督する義務を定めています。財務省告示第104号「税理士等・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」は、使用人等の不正行為を、内部規律や内部管理体制の不備で認識できなかったことに相当の責任があれば、使用者の税理士が過失によりその不正行為を行ったものとして懲戒処分の対象になるとしています。量定は、41条の2違反が戒告又は1年以内の業務停止、38条違反が2年以内の業務停止又は業務禁止です。職員のAI利用を把握できる状態にしておくことは、監督義務の面でも意味があります。

出力を確認するときの観点

  • 金額・日付・件数などの数値が原資料と一致しているか
  • 勘定科目・補助科目・税区分が顧問先の処理方針と合っているか
  • 根拠として示された条文や通達が実在し、現行のものか
  • 別の顧問先の情報が混ざっていないか
  • 確認した人と日付が記録に残っているか

仕訳チェックの範囲は仕訳チェックにAIを使う範囲、生成AIへの指示と確認の手順は会計事務所のChatGPT・生成AIの使い方で紹介しています。

AI事業者ガイドラインの「AI利用者」として

AI事業者ガイドライン(第1.2版)は、事業活動でAIシステム又はAIサービスを利用する事業者を「AI利用者」とし、U-2(安全を考慮した適正利用)、U-4(個人情報の不適切入力及びプライバシー侵害への対策)、U-5(セキュリティ対策の実施。機密情報等の不適切入力への注意を含む)などを重要事項に挙げています。7項目は、これを会計業務に当てはめたものです。

公認会計士事務所の場合と、国・業界の指針の位置付け

公認会計士事務所の場合

公認会計士は、正当な理由なく、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしたり盗用したりしてはならず、資格を失った後も同様です(公認会計士法27条)。使用人等とその経験者にも秘密を守る義務があります(49条の2)。7項目の考え方はそのまま使えます。監査業務では、日本公認会計士協会のテクノロジー委員会研究文書第11号「監査におけるAIの利用に関する研究文書」(2024年8月13日公表)も確認してください。

国と業界の指針

会計事務所のAI利用で参考になる指針表は左右にスクロールできます。
指針・資料発行元・時期使いどころ
中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版IPA、2026年3月27日情報セキュリティ6か条、付録7(クラウドサービス安全利用の手引き)、付録8(インシデント対応の手引き)
AI利用者のためのセキュリティ豆知識IPA・AISI、2026年4月2日職員研修の教材(機密情報のクラウドAI利用の制限、RAGへの外部データ混入による不正プロンプトのリスクなど)
税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン日本税理士会連合会、2026年9月30日策定告知本文は会員専用。本記事では名称・告知日・公開状況を確認し、内容は推測していません。所属税理士会を通じて原本を確認
税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に関する指針日本税理士会連合会、平成27年4月策定・令和5年3月改訂(令和6年4月一部改訂)41条の2の監督義務を果たす体制づくり。「税理士事務所における情報管理チェックリストモデル」などのモデル様式がある

これらは法令そのものではなく、事務所の規程や手順に落とし込むための材料です。日本税理士会連合会は2026年9月30日付のお知らせでAI・クラウド活用ガイドラインの策定を告知しています。本文は会員専用のため、本記事では公開告知で名称と告知日を確認し、原本の内容は紹介していません。各指針の一覧は税理士のAIガイドライン一覧【2026年10月時点】で整理しています。

明日から進める順番:導入前に事務所で決めること

7項目を一度に整えるのは大変です。次の順番なら、すでに使われているAIのリスクから手を打てます。

1. いま使われているAIを棚卸しする

個人アカウントでの利用も含めて、職員に申告してもらいます。

2. 業務と入力区分を決める

業務ごとに区分AからDのどこまで入力してよいかを決めます(入力判断表)。

3. 使うサービスの契約と設定を確認する

確認項目2の観点で、使ってよいサービスを決めます(ベンダーへの質問票)。

4. 権限・認証・承認の流れを決める

閲覧範囲、多要素認証、認証情報の置き場所、承認と反映の流れを決めます(会計ソフトとの連携方法)。

5. 記録と事故時の連絡先を決める

何を記録するか、誤入力に気づいたら誰に報告するか、顧問先への連絡手段は何かを決めます。

6. 規程・教育・顧問先への説明を整える

利用規程にまとめて職員に周知し、必要に応じて顧問先への説明や契約書を見直します(利用規程の作り方、顧問先の同意と契約の見直し)。

役割分担の目安は、所長が責任者として方針と入力区分を決めて最終判断を行い、DX担当が規約・設定・権限・処理記録を確認し、職員が規程を守って誤入力や異常をすぐに報告する形です。

AI導入全体の進め方は会計事務所のAI導入の進め方、どの業務からAIを使うかは税理士・会計事務所のAI活用|12業務の早見表で解説しています。

業務に合わせて仕組みを設計する選択肢

帳票の読み取りから仕訳候補の作成、確認、会計ソフトへの取込データ作成までを一つの流れとして整えたい場合は、業務に合わせて仕組みを設計する方法もあります。Zeimeeは会計士・税理士事務所に特化したFDE(Forward Deployed Engineer:現場で業務を確認しながら開発するエンジニア)型のAI導入・開発支援で、エンジニアが事務所の業務を確認し、帳票の読み取り、仕訳候補の作成、チェック、会計ソフトへの取込データ作成など、事務所の業務に合わせた仕組みを設計・実装し、導入後も使われ方を見ながら改善します。顧問先2,000件超の税理士事務所で、日計表の確定作業やJDL向けCSV作成の工程を見直した導入事例も公開しています。

一方、汎用チャットAIの利用ルールや規程の整備だけが目的なら、本記事のチェックリストと生成AI利用規程の作り方から始めるほうが合っています。Zeimeeの料金は個別見積もりです。

よくある質問

顧問先名を伏せれば、無料の生成AIに入力してもよいですか?

伏せるだけでは足りない場合があります。所在地や取引先、金額の組合せで特定され得るうえ、個人向けサービスには人がチャットの一部を確認するものもあります。入力先での扱いを確認し、事務所の入力区分に従ってください(入力判断表)。

法人向けプランなら、個人データを入力しても問題ありませんか?

学習に使われないことは確認事項の一つです。クラウド保存を想定したQ&A 7-53の整理を生成AIに当てはめられるかは、契約と仕組みによる個別判断です。外国で扱う場合の対応や、入力が税理士法38条との関係でどう評価されるかも確認します。

ChatGPT・Claudeの学習利用をオフにすれば、入力した情報は保存されませんか?

学習利用と保存は別です。会話、添付ファイル、プロジェクトの資料、保存済みメモリはそれぞれの保持・削除方法を確認します。ClaudeのIncognitoも通常30日保持されます。具体的な確認場所はChatGPT・Claudeの設定チェックを参照してください。

誤って顧問先の個人情報をAIに入力したら、必ず漏えい等報告が必要ですか?

一律には決まりません。事実関係と規則7条の4類型に当たるかで判断します。まず責任者に報告して影響範囲を確認し、迷う場合はPPCや専門家に相談してください。

小規模な事務所でも、個人情報保護法の安全管理措置は必要ですか?

必要です。2017年5月30日の改正法施行以降、取り扱う個人情報が5,000人分以下の事業者も個人情報取扱事業者に当たります。また、委託を受けて個人データを取り扱う事務所は、簡易な手法が例示される中小規模事業者から除かれます。

職員が個人のスマホやアカウントで生成AIを使っていたらどうすればよいですか?

IPAもシャドーAIをリスクに挙げています。税理士には使用人等の監督義務(税理士法41条の2)もあるため、利用状況を棚卸しし、使ってよいサービスと入力区分を利用規程にまとめましょう。

AIが作った仕訳が原因で申告を誤ったら、誰の責任になりますか?

税理士法33条は署名義務を定めており、申告誤りに関する責任のすべてを決める条文ではありません。相当の注意を怠った場合の懲戒(45条2項)や契約上の責任などを、具体的な事実に沿って検討します。AIを使ったことだけで責任が決まるわけではなく、個別の判断は専門家に確認してください。

令和8年の個人情報保護法改正には、今すぐ対応すべきですか?

2026年10月10日時点で主要な改正事項は未施行です。罰則の一部は2027年1月17日、本体は公布日から2年以内に政令で定める日に施行されます。それまでも、顧問先との委託関係の整理と事故時の報告ルートの見直しは現行法のもとで役立ちます(令和8年改正の解説)。

まとめ

会計事務所の生成AIセキュリティは、業務の流れに沿って考えると整理できます。受領・読み取りでは入力区分と契約(項目1・2)、候補作成ではデータ境界(項目3)、承認と反映では認証情報と承認・反映の区別(項目4・5)、保存では記録と初動(項目6)を確認し、最後に署名する税理士の確認手順(項目7)で締めくくります。

「このツールなら安全」「認証を取っていれば安全」という一言の答えはありません。契約・設定・運用・記録の組合せで、事務所として説明できる状態をつくることが目標です。次は入力の判断表、ベンダーへの質問票、利用規程の作り方、令和8年改正の解説をあわせてお読みください。

参考資料

情報の確認日:2026年10月10日。別日の資料は個別に記載しています。

ChatGPT・Claudeの設定・APIに関する公式資料は、2026年10月11日に確認しています。

主な出典

出典の詳細を見る

法令やサービスの条件は変わるため、利用前に最新の内容をご確認ください。

法令(e-Gov法令検索)

国税庁

個人情報保護委員会

総務省・経済産業省

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

業界団体

他社の公開情報(リンクは設けていません)

  • Google「Gemini アプリ プライバシー ハブ」「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」(Google)
  • Microsoft Learn「Microsoft Copilot および Microsoft Copilot Chat におけるエンタープライズ データ保護」(Microsoft、2026年10月1日更新)
  • OpenAI Docs「Browser」「Memories」「ChatGPT Work cloud security」「Plugin controls」(OpenAI、2026-10-11確認(Web版・Work・法人ワークスペースの記述を区別して参照))
  • OpenAI Docs「Data controls in the OpenAI platform」(OpenAI、2026-10-11確認(APIの学習利用・保持・ZDR))
  • Anthropic Privacy Center「How do I change my model improvement privacy settings?」「How do you use personal data in model training?」「How long do you store my organization's data?」(Anthropic、2026-10-11確認(個人プランと商用サービスを区別して参照))
  • Claude Help Center「Use Claude's chat search and memory to build on previous context」「Use incognito chats」(Anthropic、2026-10-11確認(メモリの新旧UI・プラン別の初期設定・保持の違い))
  • Claude Help Center「Use connectors to extend Claude's capabilities」「Public links for shared chats」「Share a chat with specific people」(Anthropic、2026-10-11確認(外部連携の権限・公開リンク・招待共有))
  • Claude Help Center「Configure custom data retention controls for Enterprise plans」「Manage project visibility and sharing」「Set up single sign-on (SSO)」(Anthropic、2026-10-11確認(組織の保持期間・共有範囲・認証))
  • Anthropic Privacy Center「I have a zero data retention agreement with Anthropic. What products does it apply to?」(Anthropic、2026-10-11確認(ZDRの対象・契約条件・機能の制限))

この記事の編集方針・執筆者

Zeimee編集部は、会計事務所のAI導入・開発を支援する株式会社Zeimeeの編集部です。

本記事は、会計事務所が生成AIを業務で使う前に確認すべき事項を、法令(e-Gov法令検索)、国税庁の通達・告示、個人情報保護委員会のガイドライン・Q&A・注意喚起、総務省・経済産業省とIPAの指針、日本税理士会連合会・日本公認会計士協会の公表資料といった一次情報を中心に調査して整理しています。情報の確認日は2026年10月10日です。ChatGPT・Claudeの設定チェックは2026年10月11日に公式資料を確認して追記しました。

専門家の監修は受けていません。他社サービスの記述は各社の公開情報に基づくもので、実機での検証は行っていません。法令の解釈や個別の事案への当てはめは、事務所の状況によって変わります。具体的な判断は、弁護士などの専門家や個人情報保護委員会などの所管官庁にご確認ください。令和8年の個人情報保護法改正は主要な改正事項が確認日時点で未施行のため、現行のルールと書き分けています。

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